リアル人狼ゲーム【カラ松】 (ページ47)

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番外編（逃亡者）ページ47

“もしも前世があるのなら”

そう書かれている小説をパタンと閉じた
前世なんてさ、あるわけないじゃん

あったら僕は何だったんだろうなんて無駄なことを考えてしまうから、もしもの話をするのは好きじゃない

「一松！帰ろーぜー」
「おそ松兄さん…うん、ちょっと待って。用意する」

教室まで迎えにきたおそ松兄さん
カバンに教科書やらノートやらを入れていると、一松くん！とよく通る綺麗な声がした

この声、苦手

まるで自分は正しいのか、と責められているみたいに聞こえる

この声の持ち主は、学園で一番可愛いらしいAさんの声だ

「…何」
「漢文の書き下し文、今日提出だよ。持ってきてる？」
「あ、あるよ」

ゴソゴソと鞄を漁ってAさんにプリントを渡すと、それを受け取ってジッと僕の机の上を見つめる

…なんだろ、行けば良いのに
インキャと絡んでたら、Aさんまでバカにされると思うけど

「…一松くん、この本好きなの？」
「本…あ、あぁこれ？気になって読んでみてる」
「私この本好きなんだ。特に最後の主人公のセリフ。“もしも前世があるのなら、僕はそこでも君に恋してる”って…」

そう言ってにこやかに笑うAさんの言葉がキラキラして、眩しい

僕には、わからないな、その思考

「前世なんてあるわけないと思わないの？」
「…じゃあさ、一松くんは私が、前世の記憶がある、って言い出したらどう思う？」
「え、うーん…頭おかしいのかな、って」

そう言うと、ケラケラと笑ったAさんはそう言うことだよ、と言う

どう言うことなのかわからなくて首を捻っていると、あのね、と綺麗な声で語り始めた

「世界って、やっぱり少数派が肩身が狭いじゃない？それに、自分と違う人を否定したがる。それってきっと不運なことで、見聞を広めるには少数派の意見も大事にしなくちゃいけないの」

でも世の中そう簡単にはできてない
だから、“前世の記憶がある”なんて言った人を、“記憶がない”人が否定して
その“記憶のない人”がほとんどだから、“前世の記憶がある”なんて嘘っぱちで、そんなことを言う人は信用できない
そう考える人がほとんどだから、前世がありえないって思っちゃうのよ

そう言ったAさんは、ニコリと笑って『私は前世って存在すると思うよ』と言った後、プリントをまとめて教室を出た

彼女の、あぁ言うとことか嫌いだ

普通の人が言う正論は、ただの嫌味に聞こえるのに
彼女の言う正論は、とても綺麗な言葉に聞こえる

そして、全てが正しいと錯覚する