リアル人狼ゲーム【カラ松】 (ページ36)

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三十五匹目ページ36

静かな晩餐
私たちはお互いを疑いながらも、笑顔で接しているのに疲れてしまったのだ

自分以外の、このどちらかが仲間を手にかけたのだと言う事実から目を逸らせなくなってきたのだ

いつかはこうなることはわかっていた
人間は我慢が一番苦手な種族なのだから

それでも人は、現実から目を逸らす

「…ある可能性を考えました」

私はカチャ、とスプーンを置いて、チョロ松くんとカラ松くんの顔を見つめる
見つめられた二人は気まずそうに目を合わせ、どうしたの？と私を見る

あるはずない、そんな可能性限りなく0に近い

そんなことはわかっているけど、そういう仮説を建てないと私たちはやっていけないと思ったから
明日に希望が持てなくなれば、人は壊れてしまうから

「…私たち以外に誰かいて、その人が殺人を働いているとしたら？」
「……なくもない、よね」
「あぁ、0だとは言い難いな」

二人ともわかってるのよね
そんなこと、ほぼあり得ない話だって

それでも自分の平静を保とうと、確かにあることかもしないと思い込んでいる

それがとても痛々しく見えて

だとしたら、この二人から見た私も、私が今この二人を見ているかのような、痛々しい顔をしているのだろうか

「…平和と言うのも、考えものなのかも知れません」
「…どういう意味？」
「平和が一番、だなんて人間は豪語します。でも世界が今まで、平和だったことなんてありましたか？」

世界最初の戦争は旧石器時代だと言うじゃないか
そんな時代から戦争をして、今まで世界で戦争が絶えることはなかったのだ

平和を知らない人間が、なぜ平和が一番だと言えるのか

世界が本当の平和を獲得したとき、まず感じるのは喪失感だろう
人はどこかで争いを望む

良い例が、ローマのコロッセオだろう

「平和こそが正義だとは、言い切れませんね」

悲しみに暮れた日があったことを忘れるのは、またあるかもしれないその悲しみを思って泣かないように
絶望ほど、切望したものはない

「こういう言葉を聞いたことはありませんか」

Remember the day of grief(絶望と悲哀で溢れたあの日を思い出せ)

I could see your face(君の顔が浮かぶ)
I could hear your voice(君の声が聞こえる)

Because nobody wants to die too fast(誰だって早死になんてしたくないのに)

They will not come back(彼らはもう戻ってこないんだ)

The peaceful times have made us blind(平和に日々が私たちを盲目にしたんだ)

「世界はいつも残酷なんです」