深淵の中で手を差し伸べて。:h【リヴァイ】 (ページ9)

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次の日からは普段通りの仕事をこなした。新型立体機動装置の作成作業を行い、もう既に構造を把握しているであろう開発部と技術部の兵達と一緒に作業に取り掛かる。ジゼルは最終確認をする為、目の前に並べられた新型立体機動装置を眺め息を吐いた。

「ん？ジゼルが溜息ってなんだか珍しいな、……でもまぁ昨日の今日だし仕方ないんだろうけどな……。」

「……ごめんなさい。作業に集中するね。」

「いや、いい。気晴らしに散歩にでも行ってこい。たまには休まないと。」

壁外調査の次の日くらい非番にしてくれたっていいのにな、と悪態をついた兵士にジゼルは小さく笑った。何せ調査兵団は年がら年中人手不足だ。仕方がない。

お言葉に甘えて、と腰を持ち上げればにかり、と親指を立てて元気に笑った兵士はジゼルを見送った。

上官達は今回の壁外調査で死んでしまった兵士の遺族に会いに行ったり、山のような書類仕事を捌いたりと徹夜続きなのかあのハンジさんでさえも、いつものふざけた感じは全くなく、否、ふざける気力もないのか、目の下に大きな隈を浮かばせ疲れの色を乗せていた。

エルヴィン団長は王都に出掛けてしまっていて最近では顔も見ていない。リヴァイ兵士長は食堂で見掛けるだけで会話もなければジゼルの方を見ようともしない。彼もまたいつもにまして不機嫌だ。

眉間の皴が深く刻まれていて苛立ちを抑え切れないのか暇があれば盛大に舌打ちを落としていたり。そしてそのあとは自室に篭りっぱなしだった。リヴァイ兵士長もまた書類仕事でいっぱいいっぱいなのだろう。

つい最近、リヴァイ兵士長が大量にある書類の束を抱えてエルヴィン団長の自室の扉を思いっきり蹴り飛ばしていたのを思い出した。扉が破壊され、資金不足のせいでリヴァイ兵士長が蹴り壊した扉の修復はエレンやミカサ、アルミン達がしていた。あたしも手伝おうか、と訊ねてみたが新型立体起動装置作業に集中してくれ、とエレンに言われた。

それ程までに上官達はどことなくピリピリとしていてとてもじゃないが近寄り難かった。

散歩に行って来いと言われたがこれといって行く宛がない。いや、それが散歩なのだろうが新型立体機動装置と向き合ってきた時間の方が多いジゼルはどう過ごしていいのか分からないまま、兵舎の庭に出る。

訓練所とはまた逆方向にある芝生が広がった庭にでてベンチに腰掛けてみる。生温い風がジゼルの髪を靡かせ、ジゼルはベンチの上で膝を立て膝の上に顎を置いた。