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ぞわり、と嫌な予感がする。妙な胸騒ぎが、俺を襲う。考えたくもなかった、否、可能性のある状況が、俺が最も恐れていた状況が、すぐ目前にある。
「…おい、」
自分の声なのかと疑ってしまうほどにソレは震えていた。
「はい!……兵長?」
「……伝令伝達班の連中の配置は、」
「へ?」
「さっさと言え!伝令伝達班の配置はどこだ!」
「っ……た、確か伝令伝達班の本班は荷馬車班と同じ配置だったはずです。中央後方辺りかと!」
「……っクソ!」
どこまでもこの世界は吐き気がするくらいに残酷だ。
部下の言葉を聞き終えた後、あいつが昨夜点検したばかりの新型立体機動装置のトリガーを握る。
「兵長!? 待ってください!俺達に指示を!」
「お前らはそのまま壁に向かって進め!陣形がクソに成り下がったと感じているのは何も俺達だけではない。俺ら以外の班も混乱して壁に向かってるだろう。戦闘はなるべく避けろ!ガスと刃を残しておけ!」
「は、はい!分かりました!ですが兵長はっ?」
「……どうも今の状況は理解し難い。俺は他の奴らの確認をしてくる。」
「……っ!なら、俺達も!」
「駄目だ。お前らは俺の命令に従え。」
「…ッ!でも、」
「上官命令だ。さっさと行け。」
「……わ、分かりました!ご武運を!!」
苦渋の顔をした部下達の背中を見送り俺はさっき来た道を戻る。愛馬を呼び寄せ、トリガーを握った。
まだ陣形が保たれていた頃の場所まで行けば何かが分かるはずだ。言いようのない恐怖が胸を押し潰す中、俺は自分の持つスピードを極限にまで追い込んだ。頼む、間に合ってくれ。
……無事で、居てくれ。
脳裏に浮かぶのは優しく口角を上げ色白の頬にエクボを浮かばせ、恥ずかしそうに目を伏せ微笑む、彼女の姿だった。
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葉月十香るかこ。(プロフ) - 【ゆゆゆ 様】コメント有難うございます、嬉しすぎるお言葉まで更新意欲が上がりに上がります(´˘`*)リヴァイというキャラクターを崩さずこれからも頑張ります。 (2020年4月22日 0時) (レス) id: 2554dd6fe0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ - つい一気読みしてしまいました。心情の表現やお話の構成がとても好きです!これからの二人の進展がめっちゃ気になります…更新お待ちしております! (2020年4月21日 23時) (レス) id: a103d81c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るかこ。 | 作成日時:2020年4月18日 14時