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険悪な雰囲気が漂う。
ただならぬリヴァイの様子にハンジは頭を抱えたエルヴィンを横目で見る。
ジゼルの親代わりであるピクシス司令に頼み込んだ所、王政側がそれらをバッサリと切った。彼らからすれば調査兵団という組織は煙たくて仕方が無いのだ。
だから調査兵団の、人類の希望と言われているジゼルの存在が何よりも邪魔なのだろう。王政の絶対的な権力の前ではあのエルヴィンですらも手も足も出なかった。
腐った政府にハンジは舌打ちを落とす。だがまず、この空気をどうにかしなければいけない。
「あー、リヴァイ?ジゼルが心配なのは十分理解した、だからとりあえず落ち着こうか!ねっ?」
ジゼルを調査兵団組織に置いていき、もし何かあれば元も子もないのだ。ましてや相手に関する手がかりはゼロに等しい。
そんな絶望的な状況の中でもしジゼルが攫われてしまえば探すあても、何もない。エルヴィンも苦渋な決断をしたのだ。それをリヴァイは理解している。だが、納得できなかった。
当たり前だろう。自分が気にかけている女性が巨人が彷徨う外の世界に放り出される、それなのに自分はその絶対的な力ゆえ、彼女の傍に居て守ってやる事すら出来ない。きっと気が気では無いはずだ。
リヴァイは反対側の椅子を蹴りつける。それと同時に椅子ががたり、と倒れ鈍い音が会議室に木霊した。
「おい、エルヴィン。」
苛立ちを吐き出すようなリヴァイの威圧的な声にエルヴィンは顔を上げ冷静な顔でリヴァイを見返す。
「なんだ。」
「条件がある、あいつを外に連れていくなら今から言う条件を飲み込め。」
「……良いだろう。」
それは、リヴァイの、否、リヴァイが初めてエルヴィンに出した条件だった。口約束かもしれない、壁外調査に絶対などという言葉は存在しない。そんな事、ここに居る誰もがわかっていたはずだった。
だけれど思い出すのは全てを受け入れ、包み込むような優しい微笑みを浮かべる小さくて幻想的な彼女。彼女を失いたくないという気持ちはエルヴィンも、ハンジも同じだった。彼女だけは何としてでも守り抜かなければならなかった。
「あいつを、あのガキを絶対に死なせるな。…絶対にだ。」
その言葉に、リヴァイの想いが全て詰め込まれているような気がした。
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葉月十香るかこ。(プロフ) - 【ゆゆゆ 様】コメント有難うございます、嬉しすぎるお言葉まで更新意欲が上がりに上がります(´˘`*)リヴァイというキャラクターを崩さずこれからも頑張ります。 (2020年4月22日 0時) (レス) id: 2554dd6fe0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ - つい一気読みしてしまいました。心情の表現やお話の構成がとても好きです!これからの二人の進展がめっちゃ気になります…更新お待ちしております! (2020年4月21日 23時) (レス) id: a103d81c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るかこ。 | 作成日時:2020年4月18日 14時