22話 ページ22
side 治
俺は朝からイライラしとった。
なんやアイツ、なんであんな平気な顔できんねん。
美味い、めっちゃこのスクランブルエッグ美味いけど!なんで普通やねん!!
俺昨日抱きしめてんぞ。後ろから!女子ってあんなん好きなんちゃうん?
俺はジッとAの顔を見ながら、昔興味本位で見た、同級生の持っていた雑誌に書いてあったことを思い出す。
確かそのページには、女子がイケメンにされて嬉しいことが書いとったはずや。そん中に、昨日俺がAにやったバックハグも含まれとった。
Aって女子やんな?なんで普通やねん。
俺は勝手にバックハグしながらも、それに対しての反応が何一つないことに腹を立てとる。まるで5歳児やな、なんて自虐して、Aの出してくれた料理を口いっぱい放り込んだ。
美味いなホンマに!!くそ!
「今日も美味い!!」
「え?あ、ありがとう…」
なんや素直やな、とか思いつつ、上の空。
コイツが別のこと考えとるときはいつも手元を見とることは知っとる。マネしとるときも、何度かこう言うことがあった。
たまに見せるこの表情。
綺麗な前髪の隙間から見える長い艶やかな睫毛に、またその奥にチラッと見える透き通るくらいの綺麗な瞳。それがふとこっちを見た時、ドキリと心臓が跳ねる音がする。
キュッと結ばれた唇が、化粧なんかしてへんはずやのにめっちゃ綺麗な色で。
サラリと落ちる髪が頬にかかって、あぁ邪魔そうやな、耳にかけたら──────…って思って、ハッと我に返った。
はっ?俺、俺今何しようとしとった…?
なんや気持ち悪いなぁ、と怪訝そうな顔で俺を見るAになんもないわ、と言って米粒を口に入れた。
……美味いはずやのに、味せーへん。頭にあるんはAのあの目。
「じゃあ俺、行ってくるわ」
「おん、今日は買い出し大丈夫やから」
そう言って玄関まで見送ってくれたAに手を振って鍵をかける。
……俺、どないしたんやろ。
Aのことは正直女子として見てへん。だって、学生時代は俺らのパンツ掲げて、これ誰のやー?とか言っとったやつやし。
そんなん、女子として────…。
「……クッソ」
ガシガシと頭をかいて長めの溜息を吐く。
Aのことが好きやった旧友の言葉が頭に浮かんだ。
『Aちゃんはな、あんな美人な顔しとんのに、突然めっちゃ可愛く見える時があるんや。そうなったらもう好きになったって合図やねん』
…ホンマ、その通りかもしれへん。
めっちゃかわええ、今すぐ帰って抱きしめたいくらいには。
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松々先輩(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!!最近私生活も落ち着いてきたので、今日更新予定です! (8月5日 17時) (レス) id: 480ed93775 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 久しぶりにこの神作品開いたけどやっぱり神作!!主様のペースでゆっくり更新続けて欲しい!!まぢ応援してます!無理は禁物!! (7月31日 11時) (レス) @page45 id: 7e78e362e0 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - 雷さん» 大丈夫です。ありがとうございます頑張ります! (2022年8月12日 10時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
雷 - 松々先輩『ありがとうございます頑張ります』が癖になってますけど大丈夫ですか? (2022年8月12日 10時) (レス) @page5 id: 1c759860fa (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - のんさん» ありがとうございます!頑張ります (2022年8月7日 0時) (レス) id: a6e4fce6a1 (このIDを非表示/違反報告)
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