養ってください。【宮治】

18話 ページ18

side 治

「人生二度目の宮の助手席や」
「これから何回も乗るんやで」
「確かに」

そう言って俺の隣に座ったAは、これいる？とか口開け、とか言って俺の口の中に食べ物やら飲み物やらを入れてくれる。
欲しいと思ったもんをくれるから、心読めんちゃうん、とか思ったり。

そういや、マネの頃もこんな感じやったな。俺らの望んだことをしてくれる。


「ホンマに服買ってもらってもええん？ドレスって結構高いんやで」
「俺の好みにしてや」
「懐広すぎやろ…そんなん全然OKや…」


宮センス良さげやし選んでくれたら合コンとかも着ていく服困らへんな〜、と言って笑ったAを見て、胸の奥の辺りがズキンと痛む。

……なんやこれ、意味わからん。

今まで体験した事がない痛みに首を傾げながらAの差し出すチョコを口に入れる。


「なんや、なんか考えとる顔しとる」
「え？俺？」
「せや。眉間にシワ寄っとるで」


イケメンが台無しや、と言ったAは手を伸ばして俺の眉間にあると言うシワを指で押す。

なんや今の顔、めっちゃかわええ。

……まぁ、言ったらんけど。
んな恥ずかしいこと言わへん。


「ホンマに自分顔面はええな」
「失礼やなお前」


顔だけで告られるん飽きたわ、と言いながらさっき買ったキャラメルフラペチーノを飲むA。
着いたで、と言ってドアを開けにいくと、紳士やなぁ、とか言って笑っとった。

…好きな男にこんなんされて茶化す女おらんよなぁ。


どーせAにとって俺は恋愛対象外。
せやったらAのこと恋愛対象に入れるんがアホらしい。


「これええんちゃう？」
「露出多すぎん？あんたの好み疑うんやけど」


……まぁ、Aが他の男に肌見せるんはなんか嫌やし…。
しゃあないな…。


そう思いながら選んだのは、Aの雰囲気にめっちゃ合っとるワンポイントが入った緑のドレス。

あんまやらしくないし、大人っぽいAにおおてるし、俺もしかしたら天才なんかもしれへん。


自画自賛をしながら会計に行く。
お店の人と目が合った。


「素敵な彼女さんですね。お似合いです」
「……や、今はちゃうんですけど…」
「ふふ、そうですか、失礼しました」


……今は(・・)とか言ってもーた。
後々なるみたいな言い方やん。

店員さんにも笑われたし、ホンマ最悪。


「お待たせ」
「このアクセサリーさっきのドレスに合う思わん？」
「意外とセンスあるやん」
「意外とってなんやねん」


Aがなんか楽しそうに見える。
なんやねん、同窓会に誰か好きなやつでもくるんか。

なんか知らんけどモヤモヤした。

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