怪奇百鬼夜行｛肆｝

伍弐：「指輪」 貴&若葉 ページ30

Aside


「成る程、これがそのエメラルド？」
「そぉそぉ。まぁ宝石には持ち主の怨念が溜まるって言うし、今回もその類やろうな」


そう言ったお兄様は他の依頼を片付けようと部屋を出て行った。
綺麗な指輪…。

美しい濃い森のような緑色…きっととっても高い宝石。

少しくらい…はめてみてもいいよね。


そう思ったのが、間違いだったのかもしれない。
そ〜っとはめた緑の指輪は、私の白い肌によく映えて。

す、凄く綺麗だ…！！


「おーい、A〜。夜ご飯今日食べに行くで」
「ぇ、あっ…うん！」


抜かなきゃ。

そう思って指先に力を込める。

えっ？あ、あれ？
あれ？

ぬ、抜けない…！


「A？」
「あ、わ、私気分が悪いから今日は晩ご飯いらない」
「え、大丈夫なん？看病しよか？」
「一人で大丈夫っ」


そう言って私は自分の部屋に駆け込んだ。
これはマズいぞ、いや、ほんとにまずい。

こんなの…左手の薬指にはめてしまったら結婚したみたいじゃないか！！
私は20後半まで結婚する気はないんだから！


この指にはまったエメラルド、取れないのはちょっと。


「どうしよう…」


明日、相談してみようかな。
そう思った私は、薬指を摩りながらそのまま目を閉じた。


「おはようございます！」
「おはよー…ってか日曜の朝まで集まる必要あるー？」
「Aちゃん元気！！マッスルマッスル〜」
「そうなんですよ〜。私だって集まりたくなかったです！寝ていたかったですよ！でもお兄ちゃんにバレると面倒なんで…」


なんの話？と首を傾げながら欠伸をするチョロ松は、私の左手を見る。
いつもはしない手袋をはめてきた。


「どしたの？怪我？」
「あ、いえ…このことで相談があって」


そう言われ、私は手袋を外した。

チョロ松は目を見開いた後、は？と声を漏らした。

「…誰に婚約されたの？」
「あ、違うんですよ。これは昨日…────」


そう言って私は昨日起こったことを事細かに話した。
いやー、まさか外れなくなるとは…でも意外とすっぽり綺麗にはまったと思うんだけど…。

抜けなくなるのはおかしな話…なんだけど。


「肉のせいじゃないんですよ？」
「うーん…だってAちゃん、細いからね…たいていの指輪は外れるよね」
「じゃあなんでー？」


こっち引っ張るから、とみんなで私の指輪を抜こうとするけどびくともしない。
う、嘘でしょそんなことある？


とりあえずは審議に入ろうと、みんなで机に座った。

私がデブったわけじゃないよね？

〃→←〃

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