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肆捌:「恋慕の情人」 貴&一 ページ11

Aside


「俺の好きな人を探して欲しいんだ」


そう言うのは見知らぬ制服を着た男子生徒。
横に座る一松は、困ったように私を見る。

まぁいいだろう。依頼なら叶えてやるのが人情というやつだ。

私優しいので!



「いいですよ」


そう言えば、目の前の男子生徒は顔を輝かせた。

でも一つ問題がある。
まぁあまり大きな問題でもないので大丈夫か。


「それでは、好きな人の特徴を教えていただけますか?」
「あぁ!可愛くて華奢で、お淑やかで賢い、寵を得るような女だ」
「わかります?」
「いや、全く」


私には全く見当もつかないのだが、私より賢い一松なら、と思い聞いてみたが、一松もよくわからないらしい。
人によって感じ方は違うので、見た目の話をしてもらおう。


「綺麗な黒髪に、細身だ。喧嘩したまま別れて、気がかりで」
「なるほど…この学校らしいですし、当たってみますか……」


メモを破ってポケットに突っ込む。
今は部活中。大体の生徒は学校にいる筈だ。

図書館から回るか、と思う。

本を読むのが好きだった、と言っていたからだ。



ガラッ


「いますか?」
「……いねぇ」
「でしょうね」


こんなに簡単に見つかるなら、わざわざ私に依頼をする必要はない。

そして、一つ最悪なケースを思いついてしまった。
もしその好きな人に、恋人ができていたらこの人一生忘れられないんじゃないか?そうなるとかなり面倒だ。

このタイプはそうなるとずっと悩み続けるタイプだ。

うわ面倒。


「一度学校中を探してみますか」



そして、太陽が沈み始めた頃。
オレンジ色に染まった学校内で、私はやさぐれていた。


「A、探してあげないの?」
「探しますけどー…この学校無駄に広くないですか?もう疲れました」


しかも人は動くんですよ、と言えば、そうだけどさ、と私の手を引く一松。
男子生徒は困ったような笑みを浮かべていた。

あなたにそんな顔されるなんて心外です。



「……もう一度、図書室に行ってみますか…それでいなければ諦めましょうね」
「…あぁ、そうするよ」


残念そうに諦めた男子生徒は、率先して廊下を歩く。

足音はしない。


ガラッ



「……いた」



微かにそう呟いて、男子生徒は一人、窓辺に座って本を読む女生徒に駆け寄る。



ねぇ、部室帰っていい?



「帰りたいですね。探し(びと)も見つかったことですし」
「ヒヒッ、Aって案外冷たいよね……」
「気のせいじゃないですか?みんなこんなもんですよ」


多分。

〃→←〃



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松々先輩(プロフ) - 松野美海さん» 自我失礼します……私の推しはもっぱら一松です……あの卑屈感がたまらないです最高です (2022年9月30日 0時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
松野美海 - 凄く面白いです!最初から読んでたら時間が…!つい夢中になってました!更新頑張って下さい!待ってます!ちなみに松々先輩さんはなに松推しなんですか?私はチョロ兄です☆((( (2022年9月30日 0時) (レス) @page28 id: b94de068e4 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - kuuさん» 一「ほんとに、ムカつくよね……一定数いるよ、あーゆうクズ…あ、僕もそれなりにクズだけど。フヒヒ……応援ありがと、励みにしてこれからも頑張るね…」 (2022年1月27日 3時) (レス) id: 0b2f636a57 (このIDを非表示/違反報告)
kuu - 子犬の話し本気で泣きました!なんかすごく話しなんですけど腹たちました!こんクソ野郎!すごく怪奇百鬼夜行の話大好きです^ - ^応援してます (2022年1月26日 8時) (レス) @page23 id: 1c1723a482 (このIDを非表示/違反報告)
松々先輩(プロフ) - 月花さん» チ「あぁ、そうだね、ありがとう。もう4作目になるんだね。これからもよろしくね」夢「えっ、それで終わりですか?もっとあるでしょう!!えーっと、この作品を読んでくれてありがとうございます!是非次回のお話も楽しみにしてください!ありがとうございました」 (2020年10月5日 0時) (レス) id: 884552bd5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:松々先輩 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年2月20日 23時

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