怪奇百鬼夜行｛壱｝

〃 ページ43

「それじゃあ、おやすみなさい」
「子守唄を歌おうか？」
「結構です」


カラ松兄さんをバッサリ切り捨て、Aは僕の隣で目を閉じた。

睫毛が月明かりの影になっている。


綺麗……。


「…十四松？早く寝ないと、夢から覚められなくなりますよ……？」
「……Aに会えなくなる？」
「私は愚か、皆さんに会えなくなります。それに松代さんの美味しいご飯食べられなくなります」
「……それはやだねー！じゃあおやすみ！！」
「おやすみなさい」


ニコッと笑ったAの笑顔を見て、これから見る夢の不安は一気に消え、安心して眠りについた。



かーごめかーごーめー かーごのなーかのとーりは いーついーつ出ーやる 夜ー明ーけーのばーんにー つーるとかーめがすーべったー 後ろの正面だーあれ？


「………あれー？」


起きると、いつもの場所。
いつも僕は鳥居の前にいるんだ〜。


まだ遊んでいる子達の姿は見えない。



「Aー？」


僕はいるはずのAを探す。

夢の中でAがいるって確信するのは、かなり変な感じだけど。



「ごめんなさーい！遅れました！！あの後カラ松の子守唄が始まって…あ、一松が退治してましたが」


家はいつもあんななんですね！と意気揚々とするAに、そうだよ！！と言うと、ハッと真顔になって僕の後ろをじっと見つめる。

すると、あぁ、成る程……と小さく呟いた。


「十四松、優しいから狙われたんですね」
「え？」
「霊には生前辛いことがあって死んだ方がいます。そんな人たち…特に子供の霊は、優しい人といたがるんです。だから優しい十四松を連れて行く……」


良かったですね、私がいて、と淡々と言うA。

Aがいなきゃ…死んでた……？



「……ぁ…し、死にたくない……」
「ふふ。大丈夫ですよ。私が来ましたから！何が何でも十四松をこの悪夢から解放します！」


ドリームキャッチャーがないのに、一体どうするんだろ……。


そう思ってAの行動を観察する。


「かごめかごめの歌には、意味が込められているともっぱらの噂ですよね」
「え、うん！聞いたことあるよー！」
「昔、奇形児が生まれました。奇形児って、昔は忌み嫌われていて…今も、そんな差別は消えませんが」


どんどん近づいてくる歌。

それにも構わずに鳥居を見つめて話すA。



「……表にも出されず、ずっと地下に閉じ込められて……でもある日、奇形児は脱走。一家全員を惨殺したらしいです」



後ろの正面だあれ？

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