怪奇百鬼夜行｛壱｝

拾：「七不思議四『濡れる肖像画』」 貴＆一 ページ25

一松side


「あのさ、A…」


ある日、俺はAをで、でで、デートに、誘おうと家の中でAを探していた。
まぁ、見つけたんだけど。


モックモックって感じでシュークリームを口いっぱいに突っ込んでこっちを不思議そうに見るA。
うん、まぁ、可愛いよね。うん。



「なんれふか？」
「あー…えと、出かけない？二人で」
「ふはり？」


なんれれふか？と言うA。
うん、まずその口の中のシュークリームなくそうか。


「ん、ぐっ…はぁ……で、どこへ？」


シュークリームを飲み込んだのか、俺の顔を直視して訊いてくる。

出かけたいな、と思って、と言うと、一松が！と顔を輝かせた。


「良いですよ！どこ行きます！？廃病院ですか！？トンネルですか！？」
「え、いや」
「あっ、学校良いですよ！行きましょう！！」



ってなことで話がポンポン進んで、今はなぜか学校の校門の前に立っている。
ところでAってちゃんと家帰ってるのかな…松野家にいるイメージしかない。


ガシャ、と馴れた様子で学校に忍び込むA。
なんで馴れてんの？


俺もその後に続く。


「ふいー、砂埃だらけですねぇ……あ、今回は四番目の七不思議を見に行きましょうか」


見たところでなにもないでしょうけど、と言いながら身体中の砂埃をはらう。


四番目……？


「って、確か、音楽室の肖像画が水に濡れてる…っていう？」
「それです。濡れてるのか否か、濡れているのであればなぜ濡れているのか、果たしてそれは水なのか」


気になりますよね、と微笑むA。
正直どうでもいい。が、Aが知りたいのなら俺はそれについて行くまでだ。


音楽室へGOです！と意気込んでいるA。

静かに後をついていく。


Aが俺を楽しませるために、たくさん話す話を俺は黙って聞いている。

側から見れば一方的に見えるだろうけど、Aはちゃんと俺が話を聞いている、とわかっている。



「着きましたね！鍵はちゃんと持ってます！」
「え、なんで」
「へっへーん、準備万端ですから！」


いつ職員室から鍵を強奪したのかわからないが、得意顔で鍵をチラつかせるA。

カチッと開いた引き戸をガラガラと開けると、そこには静まり返っている音楽室が。
昼間とは打って変わって静かな教室は不気味さを感じる。


そっと肖像画の方を見るけど、暗がりで全然見えない。


不気味ですねー、と呟くAにコクリと頷いた。

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