怪奇百鬼夜行｛壱｝

〃 ページ19

「血に染まるプール、って言われるようになった理由知りたいですか？」
「……話したいんでしょ？」
「はい！」
「じゃあ話しなよ」


そう言うと、あからさまに顔を輝かせるA。
うん、可愛い。


「第二次世界大戦の時に、爆風で吹き飛ばされた市民の死体がこのプールに入れられたらしいんですよ」

…グッロい話だな…。

そう思いながら続きを待つ。


「するとですね、焼けただれた傷口から、血が流れるでしょう？」

Aの口から“焼けただれた”とか聞くことあるんだ…となぜか感動する。
戦争って酷いですよね…としょぼんとして言うAの頭を撫でたくなったが、その煩悩は捨てた。


「ガラスが全身に刺さったりするんですよ？痛いです……」
「そうだろうね」
「あっ、それでですね、プールが赤く染まったんです」


怨念がまだこのプールには染み付いてるんですよ…と呟くA。


まぁ何もしてこないし良いですけど、とあっけらかんと言い放ったA。
昔からこう言うのに慣れてるのか…と急に遠さを感じた。


そして暫く歩く。

歩くたびに響く靴音。

……これって僕たち侵入者じゃない？

法律犯してない？
ヤバ、見つかったら死ぬしかない。


そう思いAを見ると、そんなこと考えていないような(って言うか考えてないだろう)顔をしている。


…………危機感無さすぎじゃない？




「着きましたね、プール！」
「凄い暗いね」


ゆっくりと警備員さんに見つからないように歩いて来たプール。
て言うか、警備員さん寝てたよ。


「……これじゃ、赤いとかわかりませんね！」
「そうだね」


本当、暗すぎて水の色が黒く見える。

赤いとかの前に、色の判別が難しい。



「…水汚いですねー」
「……て言うか、この中で泳ぐとか…怖すぎ」
「水赤いですか？見えますか？」
「……いや、見えないけど」
「上から見れば見れますかねー」


……なんでこっち見てくんの…。

上から見れば見えますかねー、と言ったきり、僕から目を離さないA。

……つまり、抱き上げろと？



「……なに」
「抱っこしてください」
「…はぁ……こうさぁ、もっとさ、女子としての恥じらいはないわけ？」


私は女子ですよ？とわけのわかって無さそうなA。
頭のあたりに疑問符が飛び回っている。


……にしても軽すぎじゃないか？


「A何kg？」
「なっ…女子に体重訊くとは何事ですか！」


じゃあ逆に言わせてもらおう。

女子が男子に抱き上げろと言うのは何事なんだ。

〃→←捌：「七不思議二『血に染まるプール』」 貴＆チョロ

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