怪奇百鬼夜行｛壱｝

〃 ページ11

「おそ松は、30日間か31日間、どちらが一ヶ月間だと思います？」
「俺は30日間」


ですよね、私もです。と同意する。
カシマレイコさんも私たちと同じ、人間の感覚なんだろうか？


…いや、いやぁ…。


まぁ元はと言えば人間なんだし、多分大丈夫、人間と一緒！と自分に言い聞かせる。
気長に待つ事にしよう。


コポ…

「……ん？」


今日はダメだな、と個室を出ようと手をかけた時。
便器の中から泡の弾ける音が聞こえた。


振り返ると、今や泡はボコボコと水面を揺らしている。


「！？」
「き、汚ねぇ…」


おそ松と同じことを思っていた私は、し、失礼ですよ…と後半にかけて注意の声が小さくなってしまった。

下水から上がってきてるのかな……？
いや、これ昔のトイレだし、ぽっとんかも……。


それはそれで汚っ……。


憎悪の目でカシマレイコさんを見つめてしまう。
イケナイ事だとはわかっているんだが、人間としての暗黙の了解が染み付いてしまっていて、脳では汚いと思い、顔も汚いと言ってしまっていた。



「ぁ…あぁ……足、をぉぉお……」
「は？」


おそ松が私と同じような顔をしながら訊き返す。
失礼ですよ、と言うが、その言葉に説得力などない。


足……は…どこ？と切れ切れに聞いてくるカシマレイコさん。

っていうかカシマレイコって長くない？もうレイちゃんって呼ぼう。
ほら、友好的なの嬉しいじゃん？(私だったら何様なんだよ、ってなるけど)



「足ぃ……どぉこぉお？」
「知りませんよ、あなたの足なんて。自分で無くしたんでしょう？自分で無くしたものは自分で探さなきゃいけないんですよ！それで昔どれだけ私が苦労したか……」


まぁそのせいで霊感も上がって、今では全然苦労してないしいいんだけど。

昔お守り、と言って渡された何かの袋を出るって言われてる廃神社の中で落として、そのまま色んな危険な目に遭った。
今ではそれで霊感が強くなり、将来稼げると思っているからそれでいいんだけれども。


あの時のお祖母様忘れられない。すごく怖かった。


お守りくらいもう一個渡してくれたってよくない！？(そういう問題じゃない)
落としたところの空気、半径5mは浄化されてたし。


あれなくす私も私かなぁ。


「大切じゃないですか！自分の足！死んだ踏切のどこかにありますよ、まぁとにかく自分で探してくださいね。あ、ところであんまり美人じゃないですね。私の『幽霊全員美人説』全力で潰すのやめてくれませんか？」


次の瞬間、レイちゃんは消えていた。

なんでだ？

伍：「口裂け女」 貴→←〃

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