大嫌いな君と【カラ松】

２９話 ページ31

「意味わかんないんだけど」
「え〜、似合うよぉ〜！一回着てみたら？」
「絶対嫌」


無理やりメイド服着せるのも犯罪なんだから！
壁まで追い込まれている私は、必死で抵抗している。


「あぁああぁぁあ！！！」

そして着せられてしまい、私の抵抗は無駄に終わってしまった。


うなだれていると、カラ松の声が聞こえる。
………これを見せてはいけない！


隠れなきゃ、と立ち上がると同時にカラ松が部屋に入ってきた。

「なっ…着替えてたらどうするのよ！乙女の着替え覗かないで！」
「乙女がどこにいる。説明してくれないか？お前の着替えを見ても何も感じないのでな」
「それはそれで失礼！」


もういいわ、とカラ松を追い出して着替える。
ぴったりだったし、何の問題もないだろう。大丈夫大丈夫。


ガラッ

「あああぁああぁあ！！！また入ってき…た……」
「よ、A。元気？」
「入ってくんなクソ長男んんん！！！」


馬鹿な長男も蹴り出した私だった。


「今日はラストだねカラ松！」
「あぁ、最後のシーンだ、気を張っていこう」


今日が終われば、次からは毎日通してお互いをダメ出ししていく。
それが私たちを高め合う方法だ、と先生は言っていたが、こいつにダメ出しすることなんてあるんだろうか。


『私ッ…あなたが好き…！嘘じゃないよ、だって…いつの間にか、恋してたんだもん…』
「ダメだ。好きが伝わってこない。好きなやつに言うように言え」
「お前それ結構キツイこと言ってるからな。好きな人いなかったらどうすんのよ」


容赦なく入るダメ出し。こいつウザいわー、と言う気になってくる。


まぁ確かに、気持ちを込めないといい劇にはならない。

「恋しろ」
「はぁ？何言ってんの、じゃああんたが私のこと好きにならせて見なさいよ」


こう言ったことを後悔した。


「あぁ、構わないぞ？」
「へ…？」


その瞬間、マットに押し倒されていることを理解する。
あ、ヤベェ。マジで堕ちる。


「ちょ、カラ松！？」
「うるさい。好きにならせてみろと煽ったのはお前だろう。大人しくされるがままになっておけ」
「ッ…………」

こんな状況なのにもかかわらずきゅんきゅんしてしまう。
顔の火照りを隠すため、私はカラ松の制服の胸辺りを引っ張って顔に当てた。

ズルすぎるでしょ…こうやっていろんな女子堕としてんの？


静かな時が過ぎる。

沈黙が続くが、嫌じゃない。


これが恋なら、私はだいぶ前から…。

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