大嫌いな君と【カラ松】

１４話 ページ16

「ばッ、馬鹿じゃないの？」
「ひ、人のこと言えないんじゃないか？」


どこかドギマギしてしまう。
修学旅行後からずっとこうなのだ。


修学旅行中に何かあったのか、と聞かれるが、カラ松にときめいたなんて言えない。

「……A、顧問が呼んでる」
「気安く呼ぶなって…」

言ってんじゃん、と呟くと、すまない…と一言。
みんな私達の変わりように不思議がっている。


「はい…ありがとうございます」
「劇の練習は、今日から始められるからな。それにしても最近、お前ら結構仲良いんじゃないか？」

気のせいです、とは言えず黙る。
確かにカラ松といると楽しい、と感じている自分がどこかにいる。
認めたくないが。


「失礼しました」
「あ、Aー、今日お前と松野日直な」
「え」


担任がコーヒーを飲みつつそういう声が聞こえた。
え、嘘でしょ。
ただでさえなんか気まずいってのに、こんな時に日直？


運が悪いとしか言いようがない。




「カラ松、今日日直だってね」
「らしいな。精々頑張れよ、クズ」
「えぇ、あなたもね、マゾ松」

俺はMじゃない、と言いながら日誌を書くカラ松。
カラ松から日誌を奪って名前を書く。

とりあえず黒板を消そう。

そして、黒板消しを手に取ったところで気づく。


前の授業が世界史で、世界史の先生の身長は190越え。
私の身長は170。黒板の高さは215。

届くはずないじゃないか。

クッソ、日誌私が書くよって言えてれば…。


この高さの違いにイラッとしつつ、仕事なのでこなそうとする。


「……」
「A頑張れー」
「170でもできないことってあるんだ」


見物するなら助けてよ、と思うが屈辱的なので口にしない。
精一杯背伸びするが、届かないものは届かないのだ。


「んー…えっ」
「届かないならそう言え、お前の脳は言葉を知らないのか？」

後ろから大きい手が私の手を包む。
驚いて振り返ると、カラ松のパーカーが。

……ここまで身長差あったっけ？


「……うるさい」
「お前はいつもそうだ。できないのに引き受けてできないで困っている」
「本当うるさい」

いちいち言わなくていいのよ。
そう言うと、はは、と乾いた笑みを漏らす。

「まぁ、それがお前の良いところでもあるらしい」
「らしいって何。まるで人から聞いたような口ぶりね」
「俺は思ってないからな」


失礼なやつ…と呟いて、パッと目をそらす。


……どんどんあなたをまともに見ることができなくなる。

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