39話 ページ3
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『な、なんで、3階なの……!?』
3階まで駆け上がった頃にはもう既に息切れ。
『あぁ、もうお姉さんにあったら文句言ったる』
と女子トイレの扉を開けた。
「!やっと来た」
フードを深く被り、マスクをしている女性。
声からして、完全に昨日のお姉さんだ。
「もう、私が昨日言ったこと忘れちゃったの?」
『そ、そんなこと言われても、私も卒業式の片付けとかで暇じゃ……』
「まぁ、言い訳はいいよ。こっち来て」
『え、ちょ』
お姉さんに手を引っ張られ、鏡の前に立たされた。
『あの』
「じっとしててね」
お姉さんはどこからか、ヘアゴムと櫛を取り出すと、私の髪を結い始めた。
『え、ちょっと。こんなことしてる場合ですか。
早め早めの行動って言ったの、お姉さんですよ』
「いいからいいから。
あっちはとりあえず、今のところ兄さん達がなんとかしてると思うし」
『兄さん達?』
「内緒。行ってからのお楽しみ」
『……』
人の髪を勝手にいじり始めて、なんなんだこのお姉さん。
というか、こんなことしてる暇じゃ……
そんなことを思っていると、
「Aちゃんはさ」
『?』
「兄さん達がなんで仲悪くなってしまったか知ってる?」
突然、そんなことを聞いてきた。
『……いえ』
「私もね、最近知ったんだけど」
次の瞬間、お姉さんはとんでもないことを言った。
「君の兄さん達は“六つ子”ってのがものすごーく嫌だったんだって。最悪だったんだって」
『え?』
なんて言った?
“六つ子”が嫌だった?
「“六つ子”ってやっぱり珍しいから、周りからよくいじられてたみたい。
最初こそ良かったものの、段々鬱陶しくなって。よくお互いを比べられるのも嫌だったんだって」
『……』
そんな理由だったんだ……
まぁ、思春期っていうのもあったんだろうけどね、と付け足した。
「はい、完成」
『!』
お姉さんは髪を2つ、高く結った。
戸惑いながら鏡越しにお姉さんを見ると、
「うん、君にはそれが似合うね」
目だけでも笑っているのがわかった。
○○○
ほら、行くよと再び私の手を取り駆け出す。
お姉さんはあぁ、もう邪魔!とフードとマスクを取った。
『えっ……?』
お姉さんの髪型はツインテールだった。
薄々勘づいていたが、まさか。
屋上に繋がる扉の前に着くと、
「ほら、兄さん達が待ってるよ」
そう振り向くお姉さんは私とほぼ同じ顔をしていた。
瓜二つではなく、少し大人びた私。
私は頷き、扉を開ける。
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森の変出者(ンシャ)(プロフ) - 素敵な小説でした。数年前の作品だとは思いますが、今読んでも、いつ読んでも心に来るお話だと思いました。ありがとうございます。 (2023年2月27日 17時) (レス) @page19 id: c0354c7227 (このIDを非表示/違反報告)
夜ノ空。(プロフ) - ネウロさん» 返信が遅くなり、申し訳ございません。 自分はただひたすらに妄想を書きなぐって満足したので、そう言ってもらえて驚いた反面、すごく嬉しいです! こちらこそ、読んでくれてありがとうございました(〃・д・) -д-))ペコリン (2020年3月13日 5時) (レス) id: d49e78348f (このIDを非表示/違反報告)
ネウロ(プロフ) - これでいいのだにじーんときました。夜ノ空。さんこの小説を作っていただいてありがとうございました。 (2020年3月10日 2時) (レス) id: f75d0817e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜ノ空。 | 作成日時:2019年12月30日 1時