悪い癖 ページ17
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｢ヒロトくんの言うように、ここ最近のAちゃんは怪我しすぎだよ。女の子なのに顔中傷だらけだし…｣
本人が大丈夫だと言っても、こう何度も試合に出る度に怪我をしていては、危惧の念を伴わざるを得ない。日が経つごとに増えていく顔などの擦り傷に、つくしは｢可愛い顔が台無しだよ…｣と呟く。
｢なんですか急に｣
｢急じゃないよ！本当に本当に、心配だったんだから｣
涙に濡れた声で話すつくしに、Aが申し訳なさそうに眉を落とした＿＿刹那、不逞な輩が水を差す。
｢そのうち顔が絆創膏だらけになるかもな｣
｢おい、ヒロト｣
｢その時はお前のこと、絆創膏女って呼んでやるよ｣
｢ヒロト｣
｢ああ、そうだな。絆創膏女なんて安直すぎるか｣
言わずもがな、ヒロトである。彼は達者なその口をぺらぺらと動かして戯言を並べた。いつしか真剣に渾名を考え始めようとしているヒロトに、基山が宥めるように名前を呼ぶが、まるで効果がない。
｢いい加減にしないと、また日暮さんに怒られるぞ？｣
｢あ？怪我してる怪力女なんかにビビるようなゴッドストライカーじゃねえよ。チキンのお前と違ってな｣
口元をニヤリと歪に上げる。得意気な顔をしている時のヒロトには、ろくなことがないことを知っている基山は｢どうなっても知らないからな｣と、忠告。
その言葉が、ヒロトの悪い癖を出す引き金となった。
｢だいたいアイツ、灰崎と同じで脳筋なんだよ。都合悪くなるとすぐに手が出るわ暴力振るうわ、殴られるこっちの身にもなれよあのブス。生まれた性別完全に間違えただろあれ。性別詐欺もいいところだよな｣
ひとたび口を開けば、出るわ出るわの罵倒の嵐。少し離れた先には担架の上で横になっているAがいるというのに、ヒロトは構わず続けている。
基山は呆れ返ったあまりものを言えず、額に手を当て、頭を抱えながら静かに首を横に振っている。
｢なあタツヤ、お前もそう思うだ＿＿!?｣
直後、基山の目の前で横から飛んできたある物によってヒロトの顔が覆われた。そのある物とはジャージだということが後に分かったのだが、あまりにも速いスピードで飛んできたため肉眼では確認できなかった。
｢いってぇ…な！！｣
顔を覆うジャージを乱暴に剥ぎ取ったヒロトが声を荒らげて、飛んできた方角を睨みつける。眼に角を立てた先にいたのは、肘をついてぜーはー、と息を乱しながら投げた構えでいるAの姿だった。
(心配なら素直にそう言えばいいのに)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
