誇り ページ16
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突然、背骨に杭が打ち込まれたような激痛が襲った。上空からフィールドに叩きつけられるように落ちたのだからその衝撃も相当なものだ、無理もない。現に、手足が痙攣するような痺れがまだ残っている。
｢いたたたた……っ｣
｢もう！急に起き上がっちゃダメって言ったのに！｣
救急箱を取りに行っていたつくしから注意を受けて、血相を変えて駆け寄った彼女に再び横に寝かされてしまう。｢すみません……｣と、申し訳なさそうに眉を垂らしたAに、ヒロトが放つ。
｢怪我人は大人しく寝てろ、ばーか｣
｢バカってなによ。あんたよりは成績いいわよ｣
｢そういうところがバカだって言ってんだよ、この鳥頭。怪我ばっかしてんじゃねえ｣
片頬を横に引き伸ばされる。ちりっとした痛みが顔に走り｢いたっ｣と、Aが声をあげて睨みつけるが、ヒロトは悪びれた様子も見せずに｢ほんとよく伸びるな｣頬の感触を楽しんでいた。
その態度にむくれたAは、痛む手で指を払う。
｢私だって好きで怪我してるわけじゃないわよ。あんた、少し怪我人を労わろうって気にならないわけ？｣
｢そんな減らず口がきける間は大丈夫だろ｣
そう言われてはぐうの音もでない。唇を不満気に尖らせて黙りこくったAを見て、ヒロトは鼻で笑う。
そんな二人をからかうように｢はいはい二人とも、痴話喧嘩はそこまでですよ｣と、つくしが手を叩いて仕切り直した。当然、不意をつくような発言をくらった二人は、顔を真っ赤に火照らせて吃りはじめる。
｢ち、ち……ちわ、っ｣
｢お待たせ、Aちゃん｣
動揺するAをよそに、｢じゃあ、はじめよっか！｣つくしは両手を合わせて笑顔で告げた。無自覚なのだろうか……何食わぬ顔で消毒液などを取り出しすと隣に腰を下ろし、Aの応急手当を始めている。
｢すみません、つくしさん｣
｢Aちゃんが謝る必要ないよ。選手のケアをするのも、マネージャーの立派なお仕事だから｣
ガーゼに消毒液を垂らして、誇らしく微笑むつくしの横顔。最初こ右も左も分からず、経験の長いAにやり方などを聞いてばかりだったつくしも、今ではマネージャーの仕事がすっかり板についている。
｢少し滲みるけど、我慢してね｣
直後、消毒液がついたガーゼが傷口に触れ、ピリッとした痛みが走る。片目を瞑り、顔を歪めたAに、つくしは心配気な面持ちで｢大丈夫？｣と問いかけた。
(はい、大丈夫です)
(すぐに終わるから、もう少しの辛抱だよ)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
