惚れた弱み ページ20
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小僧丸のラストリゾートが新たなペトロニオの必殺技、ラストリゾートDによって打ち返された。再び窮地に立たされた日本。その戦況を覆すには明日人達のあの技しか道は残されていなかった。
『灰崎！！』
最後のチャンスを掴むため全力で走る明日人達であったが、途中で灰崎の痛めた左足が止まり、脱落しかけてしまう。グリッドオメガで受け身を取り切れていなかったツケが、ここにきて回ってきたのだ。
その様子を歯がゆい気持ちでベンチから見ているものがいた。……Aである。
｢灰崎くん！！……、あっ｣
｢だから動くなって！｣
起き上がり、飛び出そうとするAの肩を後ろから掴んで制止するヒロト。手当てを受けたとはいえ、外傷した傷を塞いだだけで痛みが消えたわけではない。足腰に力が入らず、立つことすらままならなかった。
｢お願い、ヒロト｣
軋む体に顔を歪めながら、Aは縋るような声と共にヒロトの裾を控えめに掴んだ。
｢私を、フィールドまでつれてって｣
｢はあ！？｣
素っ頓狂な声を上げ、我が目を疑うヒロト。しかし、Aの目は本気だ。冗談を言っている顔ではないことくらい、傍で見てきたヒロトが誰よりも分かった。
｢そんなことできるわけないだろ！だいたいお前、｣
｢お願い！！どうしてもあそこに行きたいの！わがまま言ってることは分かってる、でも……！｣
下唇を噛み締め、懇願する姿にヒロトは言葉を詰まらせた。悔しそうに震える手が振動するように裾からヒロトの体へと伝わった時、薄く開かれていた唇が固く結ばれるように閉じた。
｢ヒロト？｣
裾を掴む手を重ねて、ゆっくり引き離したヒロトは大きなため息を吐いて立ち上がる。
｢貸しだからな｣
｢……！！｣
｢早くしろ｣
背を向ける形で屈んで、顔だけを後ろに向けたヒロト。虚をつかれたように驚いていたAだが、ふっ…と頬を緩ませると痛む体に鞭を打って背中に身をあずける。
｢しっかり掴まれよ｣
｢うん。……ありがとう、ヒロト｣
添えていた手に力を込めて、肩を掴む。体が密着したことで、ヒロトの背中に柔らかい感触があたる。
｢…っ｣
思わず過剰な反応をしてしまうヒロトだが、静かに首を振った。そして安定したことを確認すると、気乗りしない憂鬱げな顔を見せながらも駆け出していく。
驚く仲間たちの声を無視して＿＿
(さっきスケベなこと考えてたでしょ)
(は、はあ！？考えてねえよ！！誰が)
(はいはい、分かったからさっさと行ってよね)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
