行方知れず ページ12
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頭を俯かせたまま動かなくなるマリクに、目線を合わせるように屈んで｢何があったの？｣とAが優しく訊ねると彼は、俯かせていた顔を少しだけ上げた後、ルースを一瞥してから、説明を始める。
｢試合が終わった後、フロイさんが用事を思い出した、って言ったっきり戻ってこなくなったんだ｣
｢会場内をくまなく捜してはいるんだけどな｣
そんなルースもまた、頭の後ろに片手を当て、弱りきった表情を見せていた。二人の様子を窺う限り、未だに手がかりや痕跡は見つかっていないようだ。
｢あ、なら電話は？｣
｢試したけど、繋がらなかった｣
｢じゃあ、他にフロイが行きそうな場所はない？｣
うーん…と気難しそうに眉を寄せて頭を悩ませた後、人差し指を立ててAがそう問いかけるも、二人は困った顔を見合わせた後、どちらからともなく首を横に振る仕草を見せた。
｢一体どこにいったのかしら……心配ね｣
｢念の為、もう一度フロイに連絡でもしてみるか｣
｢あっ。私も後で、イナリンクから呼びかけてみる｣
｢あぁ、頼んだ｣
今すぐにでも連絡を取りたいのは山々だが、あいにくスマホは更衣室に置きっぱなしだ。歯がゆい気持ちはあるだろうが、今は大人しくルースが電話をかけるのを見守ることしか彼女にはできない。
｢どう…？｣
｢相変わらず繋がらないな｣
｢フロイさん……｣
そう言ってルースは、音声を切り替える。スマホの中から聞こえてくる電話のコール音は、廊下に寂しく鳴り響くだけだった。出る気配は一向にない。
｢やっぱりダメか…｣落胆したようにそう言って、諦めたような顔でルースが電話を切った、次の瞬間。
｢あ、フロイさん！｣
突然マリクが、そんな言葉を口にした。Aとルースは顔を見合わせると、マリクの視線を辿っていく。そこには、フラフラと覚束無い足取りでこちらへ向かって歩いてくるフロイの姿が見受けられた。
『フロイ！』
｢フロイさん！｣
三人の声が、同時に重なる。すぐさま駆け寄っていくマリクとは反対に、ルースは片手をスタジャンのポケットに手を突っ込みながら歩いていく。
｢急にいなくなるな、心配するだろ｣
｢あぁ、うん｣
｢今までどこにいたんだ？｣
｢……｣
ルースが懸念する声をかけるも、どこか上の空のフロイ。生気を無くしたようなその瞳に、その場にいた者達は謎の違和感を覚える。
そして、暫く挙動不審のように視線を彷徨わせていた後、フロイはAの存在に気づいた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月18日 14時
