KAMAKURA D ページ10
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日本代表対ブラジル代表。前半が始まって五分も経たない間に、一点を決められたイナズマジャパンは防戦一方の苦しい戦いを強いられていた。
ボールは未だブラジルがキープ。ミゲルからアルトゥールへとパスが繰り出された、その時。
｢ゾーン・オブ・ペンタグラム!!｣
そこへ、策を講じてきた水神矢が立ちはだかる。自身を中心に結界のようなものを展開させ、相手のパスなどを遮ることが可能な必殺技が炸裂。しかし、跳ね返ったボールは運悪くルシアンがカット。
ボールは今度こそミゲルからアルトゥールへ。｢バモーラ！｣その掛け声を合図に、中盤で待機していたルシアンがゴール前まで駆け上がっていく。
｢来るぞ！｣
｢今だ！｣
｢水神矢、タツヤ！｣
その隙を見た、水神矢と基山の二人は、西蔭の両サイドに立つと臨戦態勢に入る。その姿は例えるとまさに、ゴールを守る鉄壁の守護神。三人の佇みからは、そんな無言の気迫すら感じられた。
｢デスサンバ!!｣
サンバの衣装を見に纏ったアルトゥール、ルシアンの二人がボールを上空へと蹴り上げ、自らも空中へと飛び上がる。
そして双方は一糸乱れぬタイミングで、ボールにかかと落としを決めた。強力な必殺シュートが、日本代表ゴールへと襲いかかる。
『KAMAKURA
迫り来るシュートを前に、基山、水神矢が同時に飛び上がり、クロス上に交わり合う。キーパーを覆うように無数の鉱石をカマクラ状に展開させると、西蔭がボールをカマクラ内で乱反射させたる。
｢うおおー!!｣
西蔭が威力の弱まったボールを掴もうとした刹那。それを阻止しようと現れたミゲルのスパイクが西蔭の手の甲を掠め、接触。なんとかボールは死守されたものの、右手は既に負傷した後だった。
｢ナイスキーパー。見事な技だったよ、西蔭｣
｢野坂さん、ありがとうございます｣
男の勲章、と言ってしまえばそれまでだ。キーパーの意地を見せた西蔭には賛美の声と拍手が盛大に送られたが、彼の心境はそう喜べるものでは無い。
｢さあ、ここから反撃開始だ！｣
激励した野坂が立ち去っていく背中を見つめながら、西蔭は負傷した手を、静かに後ろ背に隠した。
｢……西蔭くん、少し話があるの｣
｢話すことなど何もない｣
野坂と入れ違いに西蔭の元へとやってきて、声をかけたのは、気後れした表情を見せるAだった。彼女の視線が、ちらちらと怪我をしている手に送られていることに、西蔭は嫌でも察してしまう。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月6日 5時
