経穴殺法 ページ23
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イナズマジャパンのゴールネットが激しく揺れる。ブラジルがすかさず一点を返して、得点は二対一。再び日本を引き離す形で追い上げた。ブラジル選手達の勢いは、未だ衰えていなかったということだ。
「やっと分かったよ、彼らが何をしているのか」
風向きがブラジルへと変わり、観客席は大歓声の嵐だ。熱気がスタジアム全体を包み込む中、フィールドの中央で佇んでいた野坂が一人、小さな声で呟いた。敵が使っていた卑怯な手を、見抜いたのだ。
「あ、監督からだ」
ゴール前から戻っていたAが、野坂の背後で足を止め、通達が入ったイレブンバンドへと視線を落とす。そこに表示されたメッセージの中には「禁断の経穴殺法」との文字だけが並べられていた。
｢禁断の経穴殺法か｣
｢経穴殺法？なにそれ」
納得する野坂の後ろで、Aは首を傾げる。聞き覚えのない物騒な言葉に眉を顰めていた。すると野坂が体を翻し、人差し指を立てて説明をする。
｢遠い昔に葬り去られたと言われている禁断の技さ」
｢そんなに危ないものなの？」
｢まあね｣
口だけではイマイチその凄さが分からない、と首を捻るAに、野坂は「ふむ…」と顎に手を添え考える仕草を見せた後、こう話す。
元々人体には三百以上の経穴……所謂ツボがある。その中にはついてはならない禁断のツボが存在しているのだという。
「三百!?」
「実際には、どうなのか分からないけどね」
「ふーん。どんなものがあるの？」
「例えばそうだね」
辺りを見回すような仕草を見せてから手招きをする野坂に、Aは首を傾げながらも近づく。すると身長に合わせるように身を屈めると、彼女の耳元に片手を添えてこう囁く。
「 " 感度を高めるツボ " なんてのもあるらしいよ」
「…っ!?」
低く、甘い声が蕩けるように耳から脳へと伝わる。
さらに追い打ちをかけるように、野坂がわざと生暖かい息を小さな耳に向かって吹きかけるとAは、体の熱が一気に上昇していくのを感じた。
「試してみようか？」
そう言って首筋に人差し指をあてがえば、彼女の口から ひっ…と小さな悲鳴が上がる。だがすぐに不快に感じたのか、眉を顰めAがその手を払った。
「こ、こんな時にふざけないで！」
「冗談だよ」
「当たり前でしょ！」
林檎のように顔を真っ赤に染め上げて、そっぽを向くA。その反応があまりに予想通りで面白かったのか、野坂は腕を組んだまま、悪戯が成功した子供のように目を細めて笑っていた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年9月6日 5時
