星を超えた想いを32【オリオンの刻印】 (ページ36)

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ズブの素人ページ36

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「必殺技のことだろ」

急に真顔になって、核心をついてきた。Aは虻に当惑した熊のような顔つきに変わり何も言えず息を呑む。これでは図星と言っているようなものだ。

「否定すんなよ。バレてっから。お前、ほんと顔に出やすいもんな。監視役様が聞いて呆れるぜ。大方、追加メンバーが次々に来て焦ってんだろ」

やれやれと肩を竦めて首を静かに振るアツヤ。つらつらと思っていたことを言っていく達者な口を聞く彼に、Aは耳を塞ぎたくなった。

「そんなに必殺技が大事か？」

ボソッと呟かれた言葉すらも

癇に障り、無意識に目を見開いてしまう。

「な、なに言ってんの？大切に決まってるじゃない！サッカーは必殺技がカギになってるんだから！試合だって必殺技ばかりだし……」

「大声出すな。周りの奴等に気づかれても知らねーぞ」

つい感情的になり、声を上げてしまったA。それとは反対に腰に手を当てたまま冷静なアツヤにそう諭されると慌てて口を塞いで辺りを見回す。

幸い、仲間達の耳には届いていない。

ここ最近の彼女は感情的になりやすい。

自身も頭で分かっていても色々なことが

積み重なり、制御できないのだ。

「私は、技術的にもみんなほどじゃない。でも日本代表の選手ならせめて、必殺技を完成させて仲間の役に立ちたい。そう思うのは普通のことでしょ？」

心を鎮めて今度は妙に落着いた一字一字を彫りつけるような口調で言った。冷静で凛とした声とは裏腹に、その顔は苦しげに歪められている。

自らの腕を抱き寄せて泣きそうになる彼女を見て、無感動の眼差しを向けたアツヤが一言。

「めんどくせー」

頭を掻きながらさして興味なさそうに

呟いた彼に頭に血が昇るのがわかった。

「どうせアツヤくんになんかわからないわよ！」

「分かりたくねーよ。結局お前は自分の実力を卑下して勝手に落ち込んでるだけだろ。そんな気持ちでやったところで必殺技の完成なんざ夢のまた夢だ」

言い返す言葉が見つからず、その場から離れようと立ち上がると「一星なら慰めてくれるかもな」意地の悪い笑みで言い放たれる。余裕がない今、そんなことを言われると喉が詰まるような感覚に陥る。

「これならまだ、同じズブの素人でも活躍した白兎屋の方が何倍もマシだったぜ」

「っ…」

嫌味ったらしく言ったアツヤに拳に力が入る。泣きたいような、怒りたいような、よくわからない感情に支配されたAは逃げるように離れて行った。