星を超えた想いを29【オリオンの刻印】 (ページ30)

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惨敗ページ30

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クラリオが放ったシュートは円堂の真横を通り過ぎるとゴールネットに突き刺さった。爆風に揉まれるように背中押されて、円堂はそのままフィールドに膝をつき、目を瞬かせる。

「円堂…」

その中で唯一苦々しい表情で豪炎寺が膝をつく円堂の名をか細い声で呼んだ。ちらりとベンチに視線を寄越せば、幼馴染みのAは首を横に振っていた。

＿＿それが答えであり、全てを物語っている。

＜バルセロナオーブ必殺シュートは雷門ゴールの中に突き刺さった！これで13点目だ！＞

得点差よりも雷門選手たちの心に、重く深くのしかかってきたのは" 敗北" という二文字。実況者の声すらも今の彼らには聞こえていないだろう。

「あっ…」

震える両手でボールを掴み、膝立ちになったまま拾い上げた円堂だったが手からボールが滑り落ちる。

まるで、地獄のような長さだった。

経験したことの無い疲れと痛み。

終了のホイッスルが鳴った時

くらくらと目眩がして、選手たちの

体は支えなくし糸が切れた

人形のようにその場に崩れ落ちた。

「俺達が、手も足も出ないとは……これが世界か」

途切れ途切れに言葉を紡ぎながら、鬼道は空を見上げる。真っ暗な空上に怪しく光る月は今の雷門を嘲笑っているようにさえ見える。

「日本のレベルはこの程度か」

「なんだ、と…！」

クラリオの挑発に乗るなというように、染岡の前に豪炎寺か右腕を伸ばして諭すと、染岡は痛む脇腹を抑えながら渋々身を引く。

「わざわざ日本まで来たかいはなかったな」

さらにその挑発から輪をかけるように、腰に手を当てたルーサーが首を左右に振ってバカにしたように嘲ればさすがの豪炎寺も眉を顰める。

「しかし悪いプレーではない。このチームはもっと伸びる」

「何年先のことやら」

クラリオの上から言葉を被せて余計な一言を発したのは片目を瞑り、お手上げというポーズをとって舌を出すベルガモだ。

「日本の選手たちよ！現状では話にならないが、今後のあなたがたの進化に期待する」

倒れ伏したまま動かず、乱れた息を整える

雷門選手を見下ろしながらクラリオは敬意を表す。

それすらも嫌味に聞こえてしまうのは

敗北を味わった余韻が残っているからだ。

「じいちゃん、やっぱサッカーは楽しいな！」

ブーイングの嵐が飛び交う会場。

誰もが絶望し、戦う意欲を無くした選手たちの中で円堂はそんなアウェーをもろともせず欠けた月を見上げながら高らかな笑い声を上げたのだった。