交わした約束 ページ7
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《どうしたんでしょう一星！先程から動きが鈍い！しかし、日本代表は一星にボールを集めているようです！何か作戦でもあるんでしょうか？》
マイクを通して、角馬の実況アナウンスが
会場全体に響き渡る中、イナズマジャパンは
その言葉通り、一星にボールを与え続けていた。
パスが繋がったかと思えば奪われ、奪い返し、奪い、奪われ。それが何度も繰り返され、一星の体力は限界に近づいていた。
「み、充くん！」
「は…………はぁ、はっ」
膝から崩れ落ちるように倒れ、フィールドに
両手、両膝をつき、呼吸を乱す一星の元に
Aは敵のマークを外れて、慌てて駆け寄った。
「A…俺は、もうっ」
ぽた、ぽたと滝のように流れる汗が噴き出して、フィールドの芝生を雨だれのように濡らしていく。
「立って」
「A」
「ちゃんと立って、充くん」
命令式ではあるものの、その声色は穏やかだった。一星と同じ目線になるように前に屈んで、挫けそうになった一星に向かって手を差し伸べるA。
「A……」
「大丈夫。あなたとの約束は、必ず守るから」
汗をびっしょりとかいた顔をあげて
一星は太陽を背に眩しいほど輝くAを見上げた。
「それに………帰ったら
海遊館、連れて行ってくれるんでしょ？」
太陽の光に照らされたAの頬を少しだけ
赤らんでいる姿が、真っ黒に縁取られた
一星のシアン色の瞳いっぱいに映り込んだ。
「だからこの試合一緒に乗り切ろう？
乗り気って……たくさんデートしよ？
また………一緒に遊園地にも行こう？」
ね？と。小首を少し傾けて、天真爛漫で
子供のような無垢な笑顔をみせたAに
一星は恍惚とした眼差しを彼女に向けたまま
こくり、と首を振ってその手を掴んだ。
「Aちゃん、一星くんに！」
掴んだ一星の手を引いて、起き上がらせた
Aは野坂からのパスを片足で受け取ると
一星を一瞥して、彼の足元に転がした。
「充くん、一緒に行こう」
「A…」
視線をボールに落とすと、一星は爪先で
小突くように蹴り、ころころと転がし始めていく。
「さあ、行くんだ一星くん！」
「走れ一星！」
「そうだ、一星！」
野坂、円堂、明日人たちにも背中を押されて
次第に早歩きだった足取りも、一星は
無意識に駆け出すように早くなり
Aはそんな一星に足並みを合わせて隣を駆ける。
(こうなったらやるしかねぇだろ！)
(やれやれ…)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年1月26日 19時
