作戦会議 ページ29
❀
「Aちゃん！」
ゴール前から戻ってきた野坂が
フィールド外にいるAの元へと駆け出す。
「ごめん、野坂くん……勝手なことして」
弓なりの形のいい眉を下げた
Aの右頬の上を狼狽の影が通り過ぎる。
しかし野坂はそんなAに「いや、そうでもないよ」そう言いながら首を横に振った。
「おかげで体勢を立て直すことが出来る」
「そ、そっか………よかった」
安心したように、ほっと胸を撫で下ろすA。
「(それにしても
彼女の観察眼と洞察力には驚かされる)」
はぁ………と安心したため息をつく
Aに柔らかい眼差しを向ける野坂。
「(開花すれば、きっと世界にも通用する
凄いプレーヤーになるはずだ
できることなら、僕の手でその花を咲かせたい)」
彼女の柔らかな頬を触った感触がまだ残る
自分の両手をゆっくりと開いた野坂は
何も無い掌を真剣な顔つきで見つめていた。
「野坂くん？」
その声に、はっとした野坂が掌に置いていた
視線を上へあげるとAは「どうしたの？」
心配そうな表情で顔を覗き込んでいた。
野坂は「なんでもないよ」そう言ってから
ちらりと審判を一瞥する。
「キミに折り入って頼みたいことがあるんだ」
含みのある笑みを顔に浮かばせながら
そう言うと、Aの顔が訝しげに顰められる。
「何するつもり？」
「なに、悪を成敗するための戯れさ」
「うわー、めちゃくちゃ企んでるって顔してる」
ろくなこと考えてないでしょ、と
無味乾燥ともいえる目で野坂を見て
ぷいっと横顔を見せるとよそよそしくいった。
ちらっと野坂が審判に目配りすると
審判は慌てて目を逸らした。
先程から審判がAの事を度々
盗み見ていた事に野坂は気がついていたのだ。
「ほんと、分かりやすくて助かるよ」
「何の話？」
「いや、僕のただの独り言さ」
こてん、と首を傾げるAに
耳、貸して？と囁くようにそう言えば
Aは垂れた横髪をそっ、と耳にかけると
野坂は彼女の耳にそっと唇を近づていく。
小さな子供が内緒話をするかのような光景を
たまたま目にしてしまったヒロトの
「フィールドでイチャついてんじゃねぇよ！」
堪忍袋の緒が切れた怒号と共に
二人が引き離されたのは数秒後の事だった……
(作戦会議してただけよ！変な事言わないで！)
(どう見ても作戦会議するような距離じゃねぇだろ！)
(あーもう、ヒロトうるさい！)
(ああ!? んだと、このブス！)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 323人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年12月16日 18時
