星を超えた想いを15【オリオンの刻印】 (ページ11)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:322,419 hit

紡錘陣形ページ11

❀

後半開始のホイッスルが、会場全体に鳴り響く。

ウズベキスタンボールからの試合が再開され

野坂がさっそく動き始める。

「行くよ！」

野坂の合図を受けて、灰崎は開始早々

ダストへとスライディングをけしかける。

だが、ダストは巧みなパフォーマンスと

身のこなしで軽やかに飛び跳ねて灰崎からの

攻撃をなんなくかわしてみせた。

しかし野坂は顔色ひとつ変えることなく

まるでそれを読んでいたかのように

万作と岩戸に左右に分かれるよう指示を出した。

「左右を分厚くしたのか……

では正面突破と行かせてもらおう！」

岩戸、万作が左右に分かれたことにより

正面には日本選手は誰一人おらず

がら空きとなったゴール前。

それを好機とみたダストが前線へ攻め上がる。

しかし、ダストの行く手を阻むような形で

いつのまにか後方へと下がっていた野坂が

ダストへと駆け出していた。

「野坂くん、いつの間にあんなところまで！」

フィールドの白線の外側から見ていた

Aでも、中盤で指示を出していた野坂が

先回りをしていたことに気づけなかった。

そして、突撃してくるダストとすれ違う直前。

「野獣の扱いにはなれてるよ」

野坂は、今まで日本の誰一人としてダストから

ボールを奪うことが出来なかった

そのボールを、難なくとカットしてみせた。

「すごい………ヒロトでも取れなかった

ボールをあんな簡単に取っちゃうなんて……」

実力はチームの中でも群を抜いているかもしれない、敵をかわしていく野坂の軽やかな身の子なしとその美しさに、Aは思わず見惚れていた。

「さあ！反撃するよ！中盤、不動さん、氷浦くん、明日人くん、一星くんは紡錘陣形(ぼうすいじんけい)をとって中央突破をはかる！」

野坂の指示に、不動、明日人、氷浦の三人は

言われたとおりに野坂の後ろを走り作戦へと

しかし一星だけは、野坂の指示を鼻で笑うと

一人、指示から外れた左の方角へと向かい

その陣形を乱そうと試みる。

「一星くん、指示に従って！」

「誰があんなやつの言うことなんか…………！」

フィールドの白線の外側から一星の隣を
並ぶように走りながら説得を試みるAだが
一星は全く聞く耳を持とうとしない。

それどころか、不機嫌そうに顔を顰めている。

「王者のタクト」

しかし、そんな一星の行動すらも読めていた

野坂はするりと横目を移動させて、一星を

一瞥すると、新たなタクティクスを発動させた。