演技派 ページ23
❀
思わず変な声が出たAは手で口を塞ぎながら這い上がってくる手をもう片方の手で必死に押さえる。
「ビッチ」
「はあ!?」
急に耳を疑うような言葉が聞こえ、口を押さえていた手を離して顔を後ろに向けるA。
「襲われてもだらしねぇ顔してたじゃねーか」
「してな……っ」
シャツ越しにお腹をつー、となぞられて
身をよじるA。
「ヒロトくん、いい加減に……！」
遠慮なく這い上がってくるヒロトの手に
我慢の限界だと言わんばかりに叩こうとした
その時_____。
ぽすん、とAの背中に何かが
凭れるような重みを感じると、彼女はすぐに
それがヒロトの頭だということを何となく察せた。
「ヒロト、くん……？」
「あん時はただ、一星に腹が立ったから
やっただけだで……深い意味なんかなかった」
普段の彼女ならば、腹立った勢いでそんなことされてもいい迷惑なんですけど、と言い返しているが今はとてもそんな気になれなかった。
「だから……お前には……
悪いことしたとも思ってんだよ」
Aの背中に頭を押し付けて、抱きしめる
腕の力を増すヒロト。
消え入りそうな、彼らしくない弱った
その声にAは度肝を抜かれてしまう。
「(こんなヒロトくん……初めて見た)」
心配、してくれたんだよね……とAはそっ、と腰に回されているヒロトの腕に手を重ねる。
ねえ、ヒロトくん……と、
Aがそんな彼を宥めようと、口を開いた
その時______。
「……!?」
ふにゅ、という音と共に何かを掴まれたような
感覚が身体中に走った。
「……お前ってやっぱ着痩せするタイプだよな」
先程までの弱りきった声が嘘のように
顔を上げたヒロトが そこそこある、と
言って彼女のシャツ越しに這い上がった
手がその膨らみを包んでいた。
……触ったの？あんた、どさくさに紛れて……
今までの何、演技なの？感動返せよ
"やっぱ"って、なに、"やっぱ"って…………
無理してシャレたもんつけんなよ、とか
Ｂ、とかＣ、とか……
そんなヒロトの声など差恥と怒りから
顔を真っ赤に染めて眉をピクピクと動かしながら拳を震わせるAには聞こえていなかった。
「どうせ一星に触られたんだろ」
いいだろ別に、減るほどの胸ねぇし、と
デリカシーのないヒロトの言葉を最後に
Aの「触られてないわよ!!」と言う
怒号と乾いた音が厨房に響き渡った____。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年11月23日 17時
