針 ページ48
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指先に感じた鈍い痛みとともに、Aの手からサッカーボールが滑り落ちる。
「いたっ.....！」
バウンドして転がっていくボール。
円堂が「どうしたんだ、A」と
痛みに顔を歪めている彼女に声をかけた。
「大丈夫ですか!?」
一星が血相を変えてAの元へと駆け走る。
「へ、平気.....ちょっとチクってしただけだから」
眉間にシワを寄せながら人差し指を見ると、赤い雫が皮膚にじわじわと浮かび上がっていた。
「ひっ.....ひどい！誰がこんなイタズラを！」
一星が、足元に転がっていたボールを拾い上げると、そこには鋭く尖った針が突き出していた。
「日暮さんにこんな怪我をさせるなんて.....
きっと、誰かが細工でもしたんですよ！」
唇を噛み締めて「許せません！」とボールを強く握る一星。
「一星くん.....私は大丈.....」
「いたずらだと!?ふざけるなっ！」
「大丈夫」そうAが言いかけたその時。
彼女の言葉は、鬼道の怒号とともに掻き消され、一星は胸ぐらを乱暴に掴みあげられてしまう。
「明らかに円堂を狙ってやっただろ、一星！」
何度も身体を揺さぶられ、困惑する一星。
「なっ、何言ってるんですか!?.....僕は、何も.....信じてください、円堂さん、日暮さん.....！」
眉尻を下げ、助けを求める一星に、円堂は鬼道を、Aは一星の肩を掴んで引き離させる。
「幸い、誰も大きな怪我はしなかったことだし、今日の練習はこれで切り上げよう、な？」
鬼道を宥めて、円堂が気を利かせると一星は
「はい.....」と残念そうに落ち込んでいた。
ベンチに向かう円堂に続き、Aも
絆創膏を取りに向かうため歩こうとすると
後ろからきゅっと、ユニフォームの裾を
軽く摘まれた。彼女が後ろを振り返ると、俯いたまま顔色を伺うことが出来ない一星が佇んでいた。
「一星くん？大丈夫？」
不意に腕を引かれて、一星に抱きしめられる。
彼の青い髪の毛がAの頬を掠め、擽ったい。
「あ、あの.....一星くん.....？」
胸板を押し返そうと抵抗してみるも
離れてくれない。それどころか
背中に腕を回されてより密着してしまう。
「すみません.....僕.........ッ」
その時、Aは一星の身体が
僅かに震えているのを感じた。
先輩に胸ぐらを掴まれて、疑われたことが
よほどショックだったのだろうか
「すみません」と何度も謝る一星に、Aは安心させるように頭を優しく撫でてあげる。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年10月12日 15時
