星を超えた想いを9【オリオンの刻印】 (ページ33)

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アジア予選第一試合を見事突破した

日本選手たちは、スタジアムの中にある

専用更衣室でそれぞれが勝利の余韻に浸っていた。

「よし.....できた！」

真っ白だったボードには斜め文字で

"祝！アジア予選第1戦勝利"と書き込まれていた。

きゅっ、と赤いマーカーでボード版に

文字を書き込み終わったAは

キャップの蓋を閉めて嬉しそうに声を上げる。

「おお～、なんかいい感じ！」

満足気に腰に手を当て「でしょ？」と

鼻を鳴らすAの左隣に明日人が

「本当に勝ったんだな、俺たち。」

そしてその右隣に氷浦が顎に手を当て

勝利の実感を改めて感じさせられていた。

「見事な勝利、おめでとうございます」

監督の祝福の言葉と共に更衣室内に選手や

マネージャーたちの拍手が飛び交う。

歓喜の声が更衣室に響く中、Aは

椅子に腰掛けて処置をしてもらっている

豪炎寺の元へと歩み寄り

「修くんの具合はどうなんですか？」と

腰を下げて、スタッフに質問をなげかけた。

「詳しいことは検査をしなければわかりません。ですが、回復に時間がかかるのは間違いないですね」

「そうですか....」

救急箱を片付けて、一度礼をすると

「失礼します」と告げてスタッフは

更衣室を後にした。

眉尻を下げて、落ち込む幼馴染みを前に

Aは掛ける言葉が見つからず

口を閉じたり開いたりを繰り返していた。

そこへ円堂が「豪炎寺」と名を呼んで現れる。

「お前と世界のフィールドに立ったって言うのにな。」

残念そうに、困ったように笑う豪炎寺。

その表情には僅かに影が差していた。

「まだ始まったばかりだ。豪炎寺が戻るまでは

絶対に俺たちでなんとかするさ。」

「このチームなら、もっと前へ進んでいける」

にひひっ、と歯を見せて笑う円堂に豪炎寺もつられて笑みを零しながら仲間たちに助言する。

「修くん」

「A....」

豪炎寺の前に立ったAは拳を前に突き出す。

一瞬目を見開いて、Aと拳を交互に

見つめた豪炎寺だったが、すぐにふっ、と

優しく微笑むと自らの拳も突き出した。

「絶対、戻ってきてね」

「ああ。」

拳をくっつけて、笑い合うAと豪炎寺を

その場にいた選手たちは優しく見守っていた。

「俺たちは全員でイナズマジャパンだ。

豪炎寺、しっかり治してこいよ」

円堂と幼馴染みに励まされ、今まで

影が差していた豪炎寺の表情が

優しく明るいものへと変わっていった....。