無敵ヶ原 ページ1
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突如買い出し帰りだった明日人たちの前に現れた謎の少年の登場に、緊迫とした空気が張り詰める。氷浦が蹴り返したボールを意図も簡単に片足で拾い上げた少年は足だけでリフティングを行う。
「お前誰だ？」
細い目をさらに細めて、少年を睨みつける不動。
「キミ、危ないでしょ？」
そしてボールをあてられそうになったAもまた、黙り込んだままリフティングを続ける少年に突っかかる。
「あたったらどうするつもりだったの？」
少年の元へと歩み寄り、腰に手を当てて文句を言うAにくつくつと笑う謎の少年。帽子を深く被っていることで表情が窺えずそれが余計に不気味さをかりたてた。
「ちょっとあんた、聞いてんの......!?」
少年に近づき、肩に手をかけた途端今まで俯いていた少年の顔が上がりはっきりとその顔が見えた。睨みあげるような、そしてどこか荒んだその瞳に、Aは射竦められて動けなくなってしまう。
そして、凝り固まる彼女の目の前で、少年はボールを体の上で巧みに操った。
「(何、この子.....)」
ただのサッカーファンではない、プレイヤー顔負けのボールテクニックにAの冷や汗が頬に伝う。
そんな事を思っている矢先に彼女の頬を少年が放ったボールが掠めた。それと同時に不動の声が後ろから聞こえた。
「ふ、不動くん！」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。慌てて後ろを振り返ればそこにはお腹を抑えて蹲る不動の姿。そして目にも止まらぬ速さで灰崎の横を横切った少年はタツヤ、氷浦のスライディングも難なくかわした。
「へっ！」
少年は意地悪そうな瞳で口角を上げると灰崎の後ろにいた彼女に目がけて容赦のないボールを蹴りつける。シュート並の威力が込められたボールは激しい衝撃音と共にAの体を吹き飛ばす。
「A！」
「日暮！！」
灰崎と氷浦、明日人の声が重なった。
「しばらく立てないよ鳩尾(みぞおち)にもろに入っただろうし」
ケホッ、ケホッ、とお腹を抑えながら蹲り、咳き込むAに駆け寄る三人。膝をついた不動が少年を睨みあげながら言い放つ。
｢お前は何もんだ!?｣
「僕は無敵ヶ原富士丸。君たちのようなダメ選手がFFIに出て日本が恥をかかないように、ここで全員再起不能にしてやるよ...ッ！」
ひひっ、と冷ややかな、そして意地の悪い微笑みを口元に浮かべた少年の姿は月明かりに照らされて、不気味に映った.....。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年10月12日 15時
