時を超えた想いを6【アレスの天秤】 (ページ47)

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失格ページ47

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雷門ボールから試合再開のホイッスルが

鳴り響くも、チームのわだかまりは消えず

利根川東泉の勢いに飲み込まれた雷門は

先制点をもぎ取られてしまう...

驚異的なチームワークを見せつけられた彼ら(雷門)は、リードを許してしまった。

そして、前半終了のホイッスルが鳴り響いた

衝突したまま、和解することなく前半を

終えた雷門ベンチでは、ピリピリとした

空気が漂っていた。

誰一人として何も語らない選手たちに

マネージャーたちも息苦しさを感じている。

そんな時、入場口へと歩いていく円堂の姿が

目に飛び込んだAは無意識に駆け出し

「円堂さん！」と彼の名を呼んでいた。

「A！久しぶりだな、元気だったか？」

タオルを首からぶら下げた円堂が

昔と変わらない笑顔をみせる。

不思議と、その笑顔を見ると先程までの

乱れた心が嘘だったように冷静にさせてくれる。

「後半も、遠慮しないからな」

「...はい」

にしし、と歯を大きく見せて笑う円堂とは

対照的に、Aの表情には影が差していた。

そのわずかな変化に気がついた円堂は

笑うのをやめて真剣な表情で

「悩み事か？」

と、優しく問いかけてくれた。

その言葉にAは小さく頷き、口を開いた。

「失格なんです...」

「失格？」

当てもなく彷徨っていた円堂の眼差しが、急に訝しげな表情へと変わった。

「監督がいない今だからこそ、

監視役の私が皆をまとめて

作戦を伝えなくちゃいけないのに...

私は、何もしてあげられてない」

悔しさからか、自分への怒りからなのか

分からない涙がAの頬からこぼれ落ちた。

「...失格なんて、誰がいったんだ？」

円堂の口から出た発言は、Aの予想を

超えた言葉であった。

「失格だなんて言ったやつが、お前のチームにいるのか？」

おどけた表情は消え、あやしいほど真率な表情が漲った円堂に、Aは首を左右に振る。

「そんなの口に出さないだけで...みんな」

自分の言葉にハッとして、瞳を大きく開いた。

－－－みんな、何なのだろうか。

Aは途中で言葉を詰まらせる。

自分は今、何を言おうとしたのだろうか。

少なくともひどい発言だったに違いない。

額に手を当てて、前髪をくしゃりと掴む

彼女の心情を察した円堂は、こんな言葉を投げかけた。

「選手を信頼していないのはA、お前の方なんじゃないか？」

－－－円堂の鋭く尖った言葉のナイフが

Aの心臓へと突き刺さった...。