伝説のキャプテン ページ46
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利根川東泉対雷門中の試合は、甲乙つけがたい試合展開になると思いきや、利根川東泉の優勢で試合は進んでいた。
「利根川東泉のパスには...
一人一人の強い意志が感じられる。」
彼らのプレーを目のあたりにしたAは
改めて円堂守という男の偉大さを思い知る。
「強い意志？」
つくしが小首を傾げて、フィールドで戦う
利根川東泉の選手たちへ目を移す。
「うまくは言えないんですけど...思い、かな。円堂さんを中心とした彼らを繋いでいるもの」
Aは考察するように顎に手を当てて
利根川の選手と円堂守のプレーを見つめた。
円堂守という大樹の元で育った幹たちは
試合をする度に成長していく。
それは何物にも代えられない「絆」という力。
「利根川選手の一人一人が、円堂さんに向き合い、信頼して、背中を任せてる...」
悔しいけれど、今の雷門にはないものだった。
Aは唇を噛み締めて試合を見守ることしか
できない、歯がゆい思いを味わっていた。
「伝説のキャプテンと名乗るだけはある、ということね。」
杏奈の冷静な発言に、Aは小さく頷いた。
彼女たちが話し合っている間にも
利根川東泉は雷門陣内へと切り込んでいた。
坂野上の凄まじいプレーに翻弄される雷門選手
オーバーヘッドシュートが炸裂。
しかし打ちどころが悪かったのか
雷門のゴールを揺らすことは出来なかった。
「そう簡単に、ゴールは割らせない！」
「ナイスセーブ、のりかちゃん！」
Aが声をかければ、のりかはそれに応えるように笑ってみせた。
いつもの試合、いつものように応援をしていたAたちの耳に、万作の怒鳴り声が聞こえてきた。
「おいゴーレム、何ぼーっとしてんだよ!!
時間稼ぎにもなってないぞ！」
岩戸が坂野上を止められなかったことで
抜かれたのだと、万作と氷浦は彼一人に
責任をなすりつけていた。
「そうかな？
抜かれたのはゴーレムだけじゃないよね!?」
責任をなすりつけられ、何も言えない岩戸を
庇うように、服部が前に立ち睨みあげた。
「俺が悪いって言うのかよ!?」と
逆上した万作に再び噛みつく服部。
「予想を上回る強さですね...」
奥入の発言が癇に障ったのか、氷浦は「呑気に敵を褒めてる場合じゃない！」と珍しく声を荒らげた。
小さな火種が雷門全体の空気を悪くしていく。
Aはフィールドで繰り広げられている
最悪の状態を前に、今までにないほど
心を乱していた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
