時を超えた想いを6【アレスの天秤】 (ページ41)

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羨望ページ41

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スポーツショップで、見慣れた顔があった。

「先に行ってて」と告げると、杏奈は確かな記憶を頼りにその少年を追いかけた。

途中、Aの声が聞こえたけれど

今は一刻も早く彼に聞きたいことがあった。

杏奈は駆け足で西蔭の元へと追いつき

「ちょっと！」と声をかければ

少年は立ち止まり、こちらに振り返る。

「あなた、野坂くんの親友よね？」

「親友だと？バカな」

杏奈が言った「親友」と言葉を彼は否定した。

「違うの？」と問いかければ

野坂を支える立場というだけで、親友ではないと言い切った。

杏奈は「まぁ、どっちにせよ」と

一番聞きたかった事の話題へと話を持ちかけた。

「あなただってどうすればいいか考えてるんじゃないの？野坂くんの病気のこと」

杏奈が告げた言葉に、西蔭の顔色が

みるみるうちに変わっていく。

だが、そんなことなど知らない彼女は

話を続けた。

「Aにも相談したいけど...そんなこと

聞き出せる雰囲気にもなれなくて」

Aは自分と野坂が知り合いのことすら知らないだろう。中々聞けないのはそれも理由だった。

「やっぱりあなたにも

彼を止めることはできないの？」

杏奈が質問を投げかけても、彼は再び

杏奈に背を向けて「話すことなど、ない」と

そのまま歩いていってしまう。

杏奈は、追いかける気にもなれずに

暗い表情のまま来た道を引き返して歩く。

「Aなら、野坂くんの病状を知ってるかもしれない...」

信号待ちをしながら、独り言を呟いた。

彼女の言葉は車の音で掻き消されて

誰にも聞こえない。

「(いい加減、私も腹をくくらないと...)」

野坂とAがどういう関係であれ

預かったものは返さなければならない。

それに、あの子の困った顔も見たくない。

「(だから... だか、ら)」

青信号となり、道を歩いていると

楽しそうな話し声が聞こえてきた。

顔を上げた杏奈の目に飛び込んできたのは

スポーツショップの前で楽しげに話す二人の姿。

「A...野坂くん」

咄嗟に、電柱の後ろに隠れる。

きっと今の自分は怪しい女だろう。

「(どうして...いつも)」

決心を固めた時に、揺らぐような事が起きるの？杏奈は今、言いようのない虚しさを胸に抱えていた。

「それじゃ、またね日暮さん」

「うん、また。」

話が終わり、野坂は花束を抱えて

どこかへと行ってしまう。

彼の背に手を振るAの姿でさえ

今の杏奈には眩しすぎて、直視できなかった。