勧誘 ページ33
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結局、円堂守の弱点は謎に包まれたままであった。何せ、弱小校を勝利へと導いた伝説のGK、キャプテンなのだから。
選手たちは詳しい情報を得るため、椅子へと座り、モニター画面に映し出された新聞記事に目を通していた。
「利根川東泉には、サッカー部がつい最近までなかったんですよ。」
「そうなの？」とのりかが不思議そうに言う隣で奥入が口を開いた。
「利根川東泉はそもそも、運動部自体が活発ではなく、同好会レベルで楽しんでいるそうです。」
その学校にサッカー部を一から作るところから始めたのが、円堂守であった。
「サッカー部を一から作るって...」
「それって大変だろ。」
道成、万作が口々に言う。
普通の人ならば、サッカー部を一から設立させることなど容易にできるわけがないだろう。その言葉に、つくしはクスリと笑った。
「円堂くんのことだから、絶対自分から誘いまくったんですよ。」
陸上部の幼馴染を誘った時みたいに、きっと全然関係ない部活の人達にまで声をかけまくったんだろうと、つくしが懐かしむように語った。
「当時の雷門も、FFに参加する人数にも満たなくて、廃部ギリギリ寸前だったの。」
「廃部ギリギリ!?」
Aの発言に、初耳だった剛陣が驚きの声をあげた。
「その時から円堂さんは、片っ端に 誰彼構わず声をかけまくってた。ほんと、それこそ強引にね。」
彼の熱血にどれほどの人達が絆されてサッカーバカになったことだろうか。Aは円堂との出会いが、ついこの間のように感じていた。
「(あの頃、円堂さんが声をかけてくれなかったら、きっと私は...。)」
−−−季節は春。
特にやりたい部活なんてなかった。ただ何となく学校に行って勉強をする、そんな平凡な毎日を送っているだけだった。
そんなある日、黄ばんだバンダナが特徴の彼が声をかけてきた。
−−「あ、君！サッカー部入らない!? 今、ちょうど人手が足りてなくてさ！」−−
いつもどおり放課後に帰宅をしようとしていた元に看板を掲げながら颯爽と現れた少年に真っ先に出た言葉は「汗臭い」であった。
殴り書きしたような字で「サッカー部員大募集」と書かれた看板を真顔で見つめていたAに少年は再び声をかけた。
−−「おれ、円堂守！キミ、名前は？」−−
−−「日暮...A。」−−
差し伸べられて、眩しいくらいの笑顔を見せる円堂に、気づけばその手を取り、握手を交わしていた。
これが、二人の最初の出会いだった。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年8月10日 20時
