時を超えた想いを6【アレスの天秤】 (ページ44)

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タヌキページ44

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Aがタヌキを優しく抱き抱えて、何度も謝っているものの、タヌキは彼女の腕から離れようともがいていた。

「Aちゃん、血が...！」

つくしの顔色が真っ青になる。

タヌキの些細な抵抗が原因で、彼女の腕に引っかき傷がいくつもできていた。

「い、急いで処置しないと...！」

慌てて救急箱を取りに向かおうとした杏奈に「大丈夫！」とAが待ったをかける。

「急に知らない人に酷いことされたから、怖がって怯えてるだけなの。」

優しく頭を撫でるその姿は子供をあやす

母親のようだった。

腹の虫がおさまらないのか、人差し指を噛んだタヌキにAが小さな悲鳴をあげる。

「Aちゃん！」

つくしが危ないよ、と声をかけるも

Aはタヌキに人差し指を見せて「これでおあいこね」なんて笑ってみせた。

「大丈夫、大丈夫だよ。ごめんね

...痛かったよね、酷いことしてごめんね」

Aが暴れるタヌキに、優しく何度も何度も

謝っていると、その思いが通じたのか

タヌキは暴れるのをやめて

優しくAの傷口を舐め始めた。

どうやら許してもらえたようだ。

「ほら、はやくお帰り？」

Aが優しく声をそう言ってあげると

タヌキは彼女の腕から飛び降りて

利根川東泉のベンチへと戻っていった。

「Aちゃん！！」

つくしに名を呼ばれて「なんですか」と言い終わる前に腕にひんやりとしたものが傷口に滲みた。Aが小さな声を上げる。

「痛いのはあたりまえでしょ？怪我したんだから！.....こんなに無茶して」

つくしは目に涙を溜めながら

怪我の手当をしていた。

隣にいた杏奈もまた、口には出さないものの

心配そうな表情が滲み出ていた。

「Aちゃんが人の心配するように、Aちゃんのことを心配する人もたくさんいるんだよ？」

その言葉にAは目を見開いた。

「それだけはわかって、ね？」と手当てを終えたつくしが優しく微笑んだ。Aはそんな彼女を前に、頷くことしかできなかった。

雷門中対利根川東泉中学の試合が

いよいよ始まろうとしている中

両チームがポジションへとつき

試合開始のホイッスルが鳴り響く。

雷門ボールから始まった運命の一戦。

試合開始早々、雷門選手たちは

利根川東泉を圧倒するパスワークを見せた。

「調子いいんじゃないか!?」

雷門優勢で試合がスタートし、監督がいない代わりに指揮を任されていた亀田コーチも一安心といった様子で、ホッと息をついた。