時を超えた想いを6【アレスの天秤】 (ページ30)

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背負うものページ30

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雷門中のスポンサー社長、島袋の提案に選手たちは重荷を背負わされたと捉えるのではなく、もう優勝した気分で話を進めていた。

「いや～、スポンサー冥利に尽きるというもんです。あなたがたなら必ずや優勝を勝ち取ると信じていますよ！」

手ぐすねを引きながら、島袋がトドメの一言とも言える「必ず優勝」というワードで、Aの心を突き刺した。

「(これ、負けた時本当にどうするつもりなのよ、この人達は...。)」

うちの脳天気な校長なら「その時はその時ですよ」とか言い出しそうなのだから否めない。

「はい、絶対に勝ち取ってみせます！この手で、この足で！」

「あんまりそんなこと言い切らないでください.....お願いですから。」

ひょうきんな剛陣にAは勘弁してくれと言うように、頭を抱える。

「心配すんな」と背中を叩かれるが「あんたのせいだよ」と言い返す気にすら、Aはなれなかった。

「我々も優勝祝賀会の会場を抑えておかないと。日暮くんも協力よろしく頼むよ。」

「え、いや...。」

"強化委員を、この人はいったいなんだと思っているのだろうか。"これでは、ただの雑務係ではないか。Aは口元をひくつかせた。

「優勝祝賀会!?」

道成が驚いた表情でその言葉を繰り返した。

こればかりはこの中の常識人、小僧丸も苦虫を噛み潰したような表情で「気ぃ早くないか？」と言っていた。全くもって、その通りである。

校長室を後にした明日人たちは、校長やスポンサー社長からの盛大なる企画に胸を弾ませていた。.....もちろん、例外もいる。

「すごいな！」

サッカーグラウンドを見渡す道を歩きながら、明日人が歓喜の言葉を述べた。

「完全にみんな俺達が優勝する感じで動いてんな。」

「全然すごかないわよ...。」

鼻が高いぜ、と剛陣が言うものだからAは眼鏡のブリッジを触りながらボソリと呟いた。

「(裏を返せば、それだけ期待を背負わされてるってことなのに...。)」

期待が大きい分、負けてしまった時の反動が大きいことに、彼らは気づいていないのかもしれない。

そんなことをAが一人、思い悩んでいると、前方から「あら」と女子生徒の可愛らしい声が聞こえた。

そこには、杏奈を筆頭とした生徒会役員の面々が明日人たちの行く手を阻むように立ち塞がっていた。

「杏奈さんの取り巻きだねぇ、今にも酷いこと言いそう。」

日和が身構える中、また面倒事になるのか...とAの悩みの種がまた新たに増え始める。