合理的 ページ43
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灰崎の必殺技を止められたことでそちらにばかり集中してしまった星章は反応が遅れてしまい、西蔭から野坂へのパスを繋げてしまった。
「効率良く得点を上げるために、まず相手の抵抗する力を奪う。」
野坂がそう呟くと、王帝月ノ宮の選手たちはそれに応えるかのように佐曽塚をマーク。両サイドを走ることで、佐曽塚は選手に気を取られてしまう。
その刹那のことだった。
「佐曽塚くんッ!!」
Aが大きな声で叫んだ。それもそのはず、足に強烈なシュートを浴びせられた佐曽塚はその場に倒れ込み、微動だにしなかったからである。
「わざと俺たちを狙っているのか!?」
佐曽塚だけでなく、次々と的確に足だけを狙ってプレーをする王帝月ノ宮に水神矢は違和感を感じた。
「審判どこ見てるの!?反則でしょ、あれ!!レッドカードでも何でもいいから出しなさいよ！」
両手を腰にやって、子どもを叱りつけるようにAが言う。しかし審判は「反則ギリギリのプレー」だと言って彼女の話を聞き入れてはくれなかった。
「...あくまでそっち(王帝)の味方ってわけね。」
額に青筋を張らせ、目じりを吊り上げ、唇をひん曲げるA。
「汚いマネしやがって...ッ!!」
「汚い？僕らは君たちの総力を奪うために正確に足を狙っているだけだ。」
王帝月ノ宮の激しいラフプレーに苛立ちを覚える灰崎に野坂は真っ向からそれを否定。あくまで勝利のへの合理的な手段だと言い張った。
「そもそも君たちの勝負なんて、僕の目的のためのただのステップに過ぎない。」
彼の言葉一つ一つが灰崎の心を掻き乱す。
「野坂...貴様ッ！野坂ァァァァア！」
煮え滾る怒りを野坂へぶつけようと吠えた灰崎の頭に、ボールが直撃する。
「...ッ！」
強烈なシュートを受けて吹き飛ばされた灰崎はフィールドに倒れたまま動かない。Aの声にならない叫びが野坂の耳に届いた。
「は...いざき...くん...灰崎くんッ!!」
白線ぎりぎりに倒れていた灰崎のもとへなりふり構わず駆け寄ったAは泣きそうな表情で彼の体を揺すってみるも、反応がない。
そんな彼女の姿を野坂は無言で見下ろしていた。
「何で....何でこんなこと...。どうしてこんな酷いことができるの!? やめて...やめてよ!!」
涙ながらに訴えたAの姿に、野坂は目を見開いた。頬からはぽろぽろと涙が零れ、灰崎の手に落ちていく。
どんな事をしても成し遂げなければならないことがある。しかしその決断は 時に野坂自身をも苦しめていた。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年6月19日 14時
