幼馴染み ページ44
。
氷浦が放った水を真っ向から被ってしまったA。
「氷浦が珍しく慌ててる」
「あんな氷浦、はじめて見たかも。」
持ち合わせたタオルをAへと渡し、説教をされる氷浦を前に道成と明日人は目を点にしていた。
「昨日も言ったわよね!? そのやり方はいいけど、ちゃんと周りを見ようねって！」
人差し指をたて、氷浦に詰め寄るA。彼にいたっては両手を前に出し、申し訳なさそうな表情をしていた。
「悪気はないんだ、許してやれ。」
「悪気があったら最低よ･･･。」
道成が間に入ったことで事は収まる。しかし、濡れたままだったためか、小さくくしゃみをするAは更衣室へと向かっていった。
あれから更衣室でジャージに着替え、作業を再開し始めたA。
「今日は一日ジャージかー。」
深いため息をつき、氷浦を少し睨みつける。
「ほんとごめん。」
「ま、なった事を言っても仕方ないけど。」
わざとじゃないことは分かっていたため、これ以上怒る必要もないと感じたAは白線をゆっくりと引いていく。
「そういえば氷浦くんと明日人って幼馴染みよね。」
「幼馴染みか･･･まあ、近い感じではあるけど。」
白線引きを中断し、氷浦の近くにある段差に座ると興味深そうに聞いた。
「ねっ、小さい頃の明日人ってどんな感じだったの？」
「どんなって言われても、あいつ。昔から全然変わらないから何とも言えないな。」
昔から優しくて、真っ直ぐで、めげない少年だったと氷浦は話した。"親友"その二文字にAは憧れさえ感じた。
どこか遠くを見つめて"羨ましい"と呟いた彼女を見て、氷浦もまた水撒きを中断して隣に腰かける。
「日暮は、ほんとに明日人が好きなんだな。」
氷浦の爆弾発言ともとれる言葉にAは目が点になる。
「え、なんでそうなるの？」
突拍子もない言葉に、戸惑うA。
「え、違うのか？」
当たり前のように聞き返してくる氷浦にまたも目が点になってしまう。
「日暮って、かなりの明日人贔屓だったから てっきりそうなんだとばかり･･･。」
「そ、そんなんじゃないわよ！恋愛してる余裕なんて全然ないんだから！」
頬を赤らめ、必死に否定するAの姿につい笑ってしまう。あくまで弟のように可愛がっているだけだと主張する。
「氷浦くんって案外乙女？」
「やめろよ、そういう言い方」
自分らしくない質問をしたことによって、小っ恥ずかしくなる氷浦。
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作者名：小雪
| 作成日時：2018年4月6日 17時
