ヒロインになった覚えはない！【2j3j】

▢約束 ページ22

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え、今じゃないよね？というかその表情向けるの私じゃなくない？なんで話しかけた？ってか目の前に座ったのはどうして？

次々と溢れるように出てくる疑問。それは１プレイヤーとしての疑問で、ただのサポートキャラとしてはおかしなもの。

だって、ヒロインはユウだから。可愛くて、ふわふわしてて、天真爛漫の前向きな女の子。
完璧ではなくドジっ子だという事が彼女の魅力を引き立てて、ヒロインの幼なじみとして生きてきた私でもあの子に人として惹かれる。

だから、心底嬉しそうなその笑みが私には理解ができないのだ。



「…あはは、いきなり話しかけてきてびっくりさせちゃったよね。僕はAちゃんが元気になってるかどうか知りたかっただけだから」

「え、名前、」

「うん、ダメかな？僕はAちゃんって呼びたいんだけど…」

「大丈夫、です」

「ふふ、やったぁ」



首をコテ、と傾げる叶先輩は可愛らしい。さすが自分の可愛さを自覚しているだけある。良いスチルです。

しかし！それで流されるほど私は甘くないのだ！……と、言いたいところだけど、少しでも甘えるような素振りを見せられると好印象を抱いている相手には良いよと了承してしまう長女魂が染み付いているせいでどれだけおかしくても頷いてしまった。

叶先輩はサポートキャラに対して苗字にさん付けで呼んでいたはずなんだけどなぁ。倒れちゃったのが私になってしまったからかな。ユウのことどう呼ぶかで私のとんでもねぇやらかし具合が分かるから早く呼ぶところを見たい。



「おーい！叶ー？」


「あっ、今行くー！……ごめんねAちゃん。本当はきみと一緒にお昼ご飯食べたかったんだけど僕先に食べちゃってて」

「いえいえ、気にしないで下さい」

「僕が気にするの！…あ、そうだ。明日一緒に食べない？」

「エッ」

「Aちゃんと仲良くなりたいの。ダメかな」

「え〜…っと、幼なじみと食べてるので、」

「その子も一緒でいいからさ」


「かーなーえー？置いてくぞ〜？」


「ごめーん！……じゃあそういう事で！明日よろしくね！」

「えっ、待っ………足はっや」



叶先輩は攻略対象の１人、そして自信の相棒である葛葉さんに呼ばれたかと思うと、私に無理やり約束を結ばせて足早に去ってしまった。

遠くには悪態をつきながらも叶さんを待つ葛葉さんがいてクロノワtskr…という気持ちと、どうしてそうなったという理解を拒みたくなる気持ちが湧き上がっている。

なんでや…。



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