ヒロインになった覚えはない！【2j3j】

▢転生先は ページ1

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ラノベでよく見かけた子供を助ける為にトラックに引かれた訳でもなく、ストーカーや通り魔に刺された訳でもなく、神さまに何か言われた訳でもなく、何かしらの生贄になった訳でもない。

ただ寝ただけ。ベッドに潜って、明日の朝ごはんを考えて、勉強とサークル大変だなーって思って、睡魔に抗わず寝た。

なのに気付いたら子供になっていた。

もちもちふくふくのほっぺに、紅葉のような小さい手。

栄養満点、元気いっぱい。どこぞのアンパンのようなセリフが飛び出してしまいそうになるくらいには、可愛らしい子供。

たまたまガラスに写っていた自分を理解が出来ないままペチペチ叩けば後ろからクスクスと笑い声。

なんだと思ってくるりと振り返れば顔立ちの整った男女が私を微笑ましそうに見詰めていて。

訳が分からず首を傾げれば女性が小さく口を開く。



「Aちゃん、おいで？」



それは、私の名前ではなかった。けれど、聞き覚えのある名前だった。

ギャルゲーが趣味の私が、悪友に勧められて渋々始めた乙女ゲームのヒロイン………の、サポートキャラの名前。

ふわりとした栗色の髪に、澄み切った空を思わせる瞳。ヒロインの幼なじみであり、絶対的味方。

名前、誕生日、関係性の説明しかなかったけれど、とても可愛らしくて、ゲームをプレイした人たちからは“百合ルートないんですか！！”という質問が殺到するくらいには好かれていた女の子。

そんな女の子の名前を、あの女性は私に向けて放ったのだ。



拝啓、ラノベが好きな貴方へ。

私は今、貴方や後輩のように影薄になりたいです。

譎る浹より。



全てを理解した私は、きゅう…、とその場に倒れ、病院に搬送された。



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譎る浹 → 元のお名前
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