―心から君を愛したい―【神童拓人】 (ページ10)

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Story10 ページ10

初めてだ。

天使になって初めてだ。

「からかわれるなんて… 」

初めてだ。

「何か言った？」

「 …何も」

クスクス笑う少女に俺は調子を狂わされる。

「あの、」

「入らないの？」

「 …いいのか？」

今までの人間はここまで素直に俺を受け入れてはくれなかった。

当たり前と言えば当たり前で…

だって、俺の背中には翼が生えているから。

「どうして駄目？」

こんなにもオープンに受け入れる。

「普通は拒む」

「何故？」

「俺が天使だから… 」

「へぇ、あなた天使なんだ」

じゃあ何だと思ったんだ、と心の中でツッコむと

彼女はそれを見透かしたように言った。

「翼の生えた男の子」

…世の中には色んな人間がいることがよくわかった。

でもまぁ、こっちの方が話が早い。

俺は手すりの淵から腰を上げ、病室の中に移る。

ツン、と薬品の匂いが鼻を掠める。

特に何も置かれていない、ベッドだけの個室。

「わたしは“普通”が嫌いなの」

彼女はそう言いながら窓を閉めた。