花屋とギャルソンの僕ら

花屋の僕 15 ページ38

マイコはひとりではいられない人だ

マイコの話しぶりだと、彼とはまだ別れてはいないらしい


あの頃、俺も店を出すための勉強もしながら、仕事に明け暮れていた

マイコの話もろくに聞かず、ひとりでいろいろ決めてしまい、
そのことは本当に申し訳ないことをしたと思っていた



でも、

どんな事情であれ、結果、あの時彼を選んだのは彼女だ

マイコは自分の決断に責任を持たなければならない

今自分を信用出来なかったら同じことの繰り返しだ

あの時ふたりが導き出した答えが全てだし、あれがベストだった

今更戻ることなんて俺にはもう考えられない


そっと、重ねられたマイコの手を外した


「...ありがとう、マイコ

でも、おれはもうマイコとは付き合えない


彼とちゃんと話した方がいい

ちゃんと話し合えばきっとわかることもあると思う

離れていて寂しい気持ちは良くわかるよ

でも、今逃げちゃダメだ」



「太輔さん...」


そういえばマイコは泣き虫だったな、と思い出す


見る見る内にマイコの目に涙が溜まって来るけど、俺にはもうどうもしてやれない


「あの時彼を選んだマイコは正しかったと思う

俺の選んだ道は険しいし、マイコには辛い道になったと思うから


でもおれもあの時のことちゃんと話しておきたかったから、今日会えて、気持ち伝えてくれて、本当に良かった

連絡するの、すごく勇気いったよね

ありがとう」



マイコは少し目を丸くして、涙を浮かべたまま俺を見つめた

しばらく俯いて黙っていたが、


やがて、


「...太輔さんは優しすぎる...

私、太輔さんと別れたこと、きっとずっと後悔すると思う」



そんなことを言った



「そんなの俺、ぜんぜん嬉しくないよ

大丈夫、彼とちゃんと向き合えたらしあわせになれるから、

マイコには俺のことなんか忘れちゃうくらい、幸せになっていて欲しい

マイコならできるよ」


言うと、


「...太輔さんの心の中に、新しい誰かがいるの？」


とマイコに聞かれた

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