天使のみつ 3rd

天使の宏光3 F ページ45

その日の夜


一度帰宅して、いろいろ支度を終わらせてから北山が家にやって来た


玄関チャイムが鳴った後、フードを目深に被った北山がモニターに写っているのを確認すると、すぐにドアを開けた




「お疲れ様」


「…おつかれ」




するりと身を滑らせるように玄関に入って来た北山

入るなり、フードを頭から外して、ふー、とため息を吐き、

なんか緊張しちゃった、と笑ったその笑顔は、だいぶかわいい









コーヒーを二つテーブルに置くと、ありがとう、と俺を見上げる



向かい側に座ると、まっすぐに俺の目を見て北山が切り出した




「藤ヶ谷、昨日のこと
覚えてる？」



「うん
ちゃんと覚えてる

…みつはミッションクリア出来たよね？」




「うん」




「…よかった…」


胸がひたひたになるほどに、幸せを感じたあの時


俺たちは真っ白い光に包まれた




あの後は全く記憶がなかった
どうやら北山もだったらしい




どうやって帰って来たのか分からないけど、おたがいに自分の部屋で目が覚めた





北山が好きだと言ってくれたあの時

信じられないくらいしあわせな気持ちで、

ああ俺は こんなにも長いこと北山が好きだったんだ、と

そう思った瞬間の出来事だった




俺の心が本当に必要としていたのは、


そこにある自分の気持ちを無かったことにしたりしないで、ちゃんと見て、その存在を認めてあげること


心を開いて北山のことが好きな気持ちに蓋をし続けていた苦しみから解放された瞬間、

全ての望みが叶っていた




幸せってそれだけのことだったんだと分かった









ずっと、訪れるはずがないと思い込んでいた、穏やかで優しい時間が本当はこんなにも近くに、こんなにもたくさん溢れていたんだと気付くだけでよかった


自分のものの見方一つで、いつもいる世界はまったく違う世界になる









ただ一つだけ気になっていたこと




「目的を達成することができたなら、みつと、北山はどうなったの？」

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