天使のみつ 3rd

天使の宏光2 F ページ44

現場に着いて、車を降りると早速渉に声を掛けられる



「おはよう、太輔」


「あ、おはよう、ワタ
あの…北山見た？」


「いるよ、あそこに」

渉が視線を送った先には、玉と北山

見たところ至って普通の北山
に、あの時大きな羽根が見えたことがまるで嘘みたいだ




ちょっと行ってくるね、と渉に声をかけて北山のところに向かう

「おはよう北山、玉」

「あ、はよ藤ヶ谷」

「おはよーガヤ

あー俺宮田探してたんだ
ミツ、またね」

何かを察したのか玉が外してくれたので、北山に近付けば、


「…終わったら藤ヶ谷の家に行く」

北山が通り過ぎ様に耳打ちした


やはりあれは夢ではなかったんだろうか







撮影は予定通り始まり、滞りなく進行していく


休憩中、北山は相変わらず一番遠いところで二階堂とはしゃいでいた


1人でその様子をぼんやり眺めていた俺に、玉が近付いて来た



「ガヤ、よかったね」



「…え？」




「ミツとうまく行ったでしょ？」





「…玉…」





今ならわかる

玉の気持ちは本物だったと思う



でもどこかで、

俺と北山のために一役買ってくれたんだとも思っている



多分、玉は自分の気持ちを北山に伝えるつもりはなかったんだろう


でも俺たちの気持ちに気付いていて、自分が行動を起こす事で俺の気持ちに発破をかけてくれたんだ





「玉…本当にありがとう」






俺の腕を両手でぐっ、と握った玉の目は、可愛いけれど鋭い





「ミツに冷たくしたら俺、すぐ奪いに行くからね」





「……わかった
もう大丈夫

正直まだどうなっているのかよく分からないけど…
ちゃんとしたら玉には必ず報告する」


ふ、と頬を緩ませた玉は、ひらひらと手を振って宮田の方に歩いて行った

天使の宏光3 F→←天使の宏光1 F

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す