天使のみつ 3rd

夢の終わり3 F ページ42

「…誰かに対して強くて純粋な気持ちが沸き起こる時、天使になれる資格を手に入れることができる

あの本はなぜかその資格を持つ人間しかみつけられないらしい」


覚悟したように、北山が口を開いた






「誰かに対する強い気持ち…？」







「本を手にした時、選ぶんだ

誰のところに行くのか


そして、その名前をサインする」



どきどきと痛いほど胸が逸る








「北山が…サインしたの？」





「そう

藤ヶ谷太輔って」





「北山…」








「どう言う訳か、お前のこと
気になってたずっと


もうずっと前から

だから」







信じられない気持ちで北山を見た





だって…



嘘だよ





俺はずっと、あんなに素直じゃなかったのに




嫌われてるかも知れないとすら思っていたのに











恐る恐る身を乗り出して、北山の頬に触れる



この頬の感触は、大人になっているとは言え、天使のみつと同じものだとわかる




意に反して震えてしまう手を、北山の左手が優しく掴んだ





…ほんと、なんだ






ゴンドラはもうすぐ12時の位置

ゆっくり立ち上がり北山の隣に移動する

すると、ゴンドラが傾いて、バランスを崩した拍子に北山に覆い被さるかたちになった

うわ、あぶね、と言いつつも、俺を支える北山にそのまま尋ねる











「北山が、みつ、なんだね？」

















「…うん





天使の時は、自分の意思では動けないけど…


みつは、もう1人の俺だ」












俺にとって大切な存在のふたりは同一人物だったんだ






そう思ったら、もう何も考えられなくなって、そのまま北山を強く抱きしめた






背中に回される両腕が、
俺を心の底から暖かくする




まるで、みつといるみたいに











「…この後もし忘れられちゃったとしても、


俺はずっと藤ヶ谷のこと見てる






多分、みつも





忘れない、ずっと」








「北山…」








「好きだ
藤ヶ谷」








俺の目から一粒、涙が転がり落ちた









すると、そのとき、






「っ！！


うわっ………！！」


北山の膝に乗っていた、バッグの中の本が強烈な光を放ち、その真っ白な光につつまれた




瞬間、思わず顔を覆ってしまったが、

少し弱まった柔らかい光の中で、開けられそうになった目を薄く開くと、





一瞬、ほんの一瞬、小さなみつが見え、






そしてその姿は、見る見るうちに、


大きな羽根のある大人の北山になった

天使の宏光1 F→←夢の終わり2 K

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す