天使のみつ 3rd

答え合わせ7 F ページ29

リビングには、みつのいた痕跡がそこかしこに存在する

片付けようかとも思ったが、それらがないと、みつが来た時に寂しいだろうと、そのままにしておいた


北山は、必要以上には聞かなかったが、状況を把握するためか、絶えず部屋の様子を伺っていた

お茶を出されたテーブルの前のソファに大人しく座るも、目はそばにあるぬいぐるみに釘付けになっている



「話してなかったけど、家に来る天使は普通の子どもなんだ

だから、いろいろ必要で…」


「……うん」


理由を言わないとなんとなく気まずいので説明し、食事の支度をしていると、ぬいぐるみを手に取り触っている北山が可愛く見えて仕方なくて、思わず微笑んだ





「いただきます」

インスタントのお吸い物と、お弁当に手を合わせる

こんなふうにプライベートな二人だけの空間で食事をするのは、グループ以外では先日の焼肉を除けばかなり久しぶりでなかなか緊張する


でも居心地も悪くなく、なんだか昔を取り戻したみたいで、

つくづく、この関係性を失いたくないと思う



「…本、読めた？」

「うん
あれからすぐに読んだけど…

28日経った時にどうなるのか、具体的な記載は出て来なかった

多分、明日には読み終わる」

「…そっか」

「藤ヶ谷が知りたいこと、聞いてみて

知ってることは全部答えるから」


「ありがとう」





北山が知っている天使の話は興味深かった


天使は心に想う大切な人に幸せになって欲しくて特定の人の元にあらわれるのだそうだ


その大切な人の身体と心の状態、現実にどんな行動をしているのか、天使にはだいたいわかるらしい

天使は、そばにいる人をリラックスさせたり安眠させてあげる効果があり、痛みを和らげることもできる

それらは確かに俺が経験したことそのものだ



「天使ってすごいんだな

…でもみつはなんで俺を選んでくれたんだろうな」



その問いかけにだけ、北山は答えなかった





明日は早いと言う北山を見送り、明日の支度をする


この日、北山が帰った後もみつは現れなかった


みつが来た日から、28日間まで、あと２日だ

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