天使のみつ 3rd

本の行方2 F ページ3

一昨日、北山は体調を崩した

俺とふたりでラジオの収録の日だった


それまでの疲れもあったのだろう

少し休んだら回復したらしい


大事に至らず事なきを得たが、その日はだいぶ辛そうだった


北山は昔から時々無理をして身体を壊す



その後が心配ではあったが…
どうやら玉が面倒を見ていたようだ






昨日玉と一緒に移動車に乗っている時




『付き合ってるよ』

と、玉は言った

それは微かに挑発している態度のように俺には思えた






『…って、言ったらどうする？』



『なんだ…びっくりした
嘘かよ』



『うん、まだね、そんなんじゃないんだけど



でも、もうすぐじゃないかなあって思ってる


俺、今アタックしてるところだから』





『………っ』



『どうしてガヤがそんな顔するの？

ガヤはミツが嫌いそうに見えるよ 違うの？』







…一言も、返せなかった








家で不貞腐れて寝ようとしていたところへ、みつが現れた


みつは俺のためにたくさんの涙を流してくれて、自分でも驚いたが、俺もみつと一緒に泣いた


ずっと、芝居以外で泣いてなかったからわからなかったけれど、

涙というのは浄化作用があるのだと理解した

心が洗い流されたようで、みつと一緒に横になった頃には、もうすっかり自分の気持ちが整理されていた





今までの、北山に対する子どもじみた自分の態度を恥ずかしく思い、


気持ちに正直に生きる事を放棄していた自分に後悔した





もう、こんな想いをしないためにも、


もっと素直になろうと心に誓った

本の行方3 F→←本の行方1 F

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す