天使のみつ 3rd

転機1 F ページ18

その後、北山にも話しかけることはできなかった

そしてこれでこの先、またグループの仕事には当分顔を出せない

ロケ中、常に仲良さそうにくっ付いている玉と北山が気になりながらも、俺はまたひとりで移動車に乗り込んだ








その日の撮影終わり、

「藤ヶ谷くん、お疲れ様です」

後輩から声を掛けられる


「お疲れ様
今日会わなかったよね
撮影あった？」

「はい、別の撮影で隣のスタジオに来てて
俺謝らないといけないことがあって藤ヶ谷くんを待ってました」

同じドラマで共演していることもあり、てっきり挨拶に来てくれたんだと思えば、そのまま楽屋に呼び出された




「これ…藤ヶ谷くんの物ですよね？」

差し出されたのは何かが包まれている白っぽい布

「え？
俺のじゃないよ？」

全く心当たりが無いものだった



「え…ほんとですか？
これ、多分、藤ヶ谷くんに送ってもらった時に持って降りちゃったみたいで、てっきり藤ヶ谷くんの物だと思って…」



「…っ！

ごめん、それ、見せてもらって良い？」


手に取ったその布を広げればご丁寧に折りたたんであるトートバッグで、中身は見えなかった


その袋を広げると、中には綺麗な表紙の本と眼鏡ケースが入っていた




もしかしたらこれ





「ごめん、これ一度預かってもいい？

これを探してる人を知ってるかも知れないから聞いてみたいんだ

もし違ったら他の人のかも知れないし、すぐに返すから」


「ああ、もしその方のだったらほんと、ごめんなさい

あの時たくさん荷物を持ってたから気付かないうちに紛れ込んでしまったみたいで

しかも俺、あれから1週間以上荷物全部解けてなくて
お返しするまで随分時間がかかってしまって、本当にすみません」

「ううん、全然
見つかって良かったよありがとう
また連絡する」


少しホッとした様子の後輩の背中を見送って、じっと手元の本を見つめる




たぶん……




これは、北山が探していたものだ

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