みんな元気になりますように 2

天使の夏祭り4 ページ10

しばらくみつを下ろして手を繋いで歩いていると、青い瓶の並んだ店の前で立ち止まった


「喉乾いたね、みつ、これ飲もうか」

「こえなに？」

「ラムネって言うんだよ」

炭酸なんて飲ませたことがないので、飲めるか分からなくて、とりあえず一本だけ買ってみる

不思議そうに瓶を覗き込んでいるみつの前で、お兄さんが蓋を開けてくれた

途端に吹き出した泡に、驚いて俺を見上げるみつ

「あっ！たいしゅけ、こぼえちゃった」

「うん、でも止まるから大丈夫だよ」


ラムネを受け取り、みつと大きなパラソルの下の椅子に座る

「ちょっとずつ飲んでごらん」

素直に口を付けたみつは、まるで梅干しでも食べたみたいな渋い顔になったので、かわいそうだけど思わず笑ってしまう


「みつ、どうだった？」

「おくちがぱちぱちしてびっくりちた」

「飲めそうかな？」

今度はぱちぱちが分かっているから、こくんと飲み込んであまくておいち、と笑う

どうやら少し慣れたみたいだ

「ゆっくり飲むんだよ?」

「こんろはたいしゅけのばんらぉ」

「…ありがと、みつ」


みつは本当に優しくて、何かを独り占めしたりは絶対にしないんだ


それから交代交代で一本のラムネを飲んだけれど、やっぱりみつは飲むたびに目を瞑って口を窄めていて、たくさんは飲めなかった

その、なんとも言えない渋い顔が、写真に収めておきたいくらい、どうにも可笑しくて可愛かった



瓶の中身が少なくなってくると、中に入ったガラス玉がカランと音を立てる


「あえ？

たいしゅけ、ここ、なにが入ってうの?」

「ガラス玉だよ
最後まで飲んだら、ちょっと触れるよ」

「しゃわりたい！」

みつが言うのでそれからラムネをふたりで最後まで飲み終え、瓶を逆さまにしてみつの指に触らせると、指でカラコロと転がしている


「れてこないね！」

「瓶のフタの役割をしているから、取れないんだ」

「れも、どうやってはいったの？？」

こどもの純粋な質問に、そういえばどうやって入れるのだろう、と答えられずに本当だね、と同意する


「あとで調べてみよう」
「うん！」




「ありやとう、ごちしょうしゃまれした」


「みつ、ごちそうさま出来てえらかったね」

頭を撫でて言えば、嬉しそうにみつは笑った

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